1995 Fiscal Year Annual Research Report
労働時間・労働組織・従業員持株制度を巡る利害関係の再調整
Project/Area Number |
07730072
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
BERNDT E. 立命館大学, 経営学部, 助教授 (00268137)
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Keywords | 新日本的経営 / 日本的労使関係 / 労働時間 |
Research Abstract |
この研究は、日本企業における事例の分析に基づいて、労働時間・労働組織・従業員持株制度に関する当事者の利害の総合的な再調整の無有・様子を把握し、欧米の類似事例と比較しながら、いわゆる新日本的経営の具体像を探ることを課題にしてきた。 研究方法としては、地域性(関西を中心に)・産業構造的重要性(既存ないし潜在的基幹部門)・高度な収益性(バブル経済の崩壊後も、利益の確保・増加)を総じて選別基準にし、京セラ、村田製作所、オムロン、堀場製作所、島津製作所、ローム、シャープという優良上場企業の人事担当(経営側)と労働側に対して、人事政策の現状及び展望についてのアンケートを実施した。それと同時に、当該企業の10年間にわたる財務諸表を時系列的に分析し、証券会社のアナリストや経済ジャーナリストなどの第三者及び産業・全国レベルの労使団体に対しても、当該企業及び日本的経営の改革についての聞き取りを行った。更に、マスコミにおける当該企業の情報を幅広くスクリーニングした。 この研究の過程においては、アンケートに対する回答の多くが断片的に終わってしまったことと、当該研究の戦略的意図が個別企業レベルの経営側や労組側の臨機応変的問題意識と大きく乖離していることを受け止めて、日独企業の比較を可能にするためにも、自動車メーカーも対象にしながら、労働時間という観点からの財務分析に重点をシフトすることした。 1.日本的経営型人事制度の総合的な変革が叫ばれ、特に店頭企業に集中する個別事例が紹介されているが、当該企業の現場における直接当事者のレベルでは、(1)労働時間(の短縮と弾力化との融合)、(2)徹底した分権化及び透明化に基づく労働の前提条件、過程、成果に対する自主管理の強化による労働組織の再編成、(3)資本の論理に基づく従業員持株制度の改革による新型経営参加という三つの要素から構成される戦略的アプローチが考えられていない。 2.その理由は、低コスト及び高品質志向の多品種大量産システムが低付加価値(薄利多売)と結ばれているために、上述の戦略コストが上昇を通じて既成経営体制のコスト競争力の低下をもたらすことが強く懸念されるところにあると考えられる。 3.しかし、成熟化、国際化、情報化、高齢化、個人化等の環境変化の進展及び日本的経営の修得と情報技術の活用に基づく欧米企業の逆襲や東南アジア企業の追い付き・追い越し等の国際競争の構図変化から考えると、日本企業にとって、高付加価値に基づく発注型品種少量生産システムへの変貌が最終的に避けられない。 4.但し、その過程においては、個別企業が当然でありながら、主役を演じなければならないが、法律・税制・教育まで及ぶ国家政策も方向を転化し、企業内調整を中心にしてきた労使(関係)も個人を重視するルールへの変更と産業(職業)部門レベルにおける調整の強化を遂行するのが必要であろう。 今後の研究においては、労働時間に重点を置いた主要企業の財務分析を継続しながら、自動車及び電子・電器という日本経済の基幹産業分門を欧米の当該部門および主要企業と比較して、上記のテ-ゼンを更に裏付け続けていく予定である。
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