1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07740271
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松永 悟明 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10222308)
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Keywords | 低次元有機導体 / アニオン秩序化 / 超伝導 / 乱れ / スピン密度波 / 磁気抵抗 / 磁場侵入長 / 異方性 |
Research Abstract |
(TMTSF)_2ClO_4はClO_4アニオンの秩序化が試料の冷却速度に依存し、急冷するとスピン密度波状態に転移するが、徐冷すると超伝導状態に転移する。このアニオンの秩序化を利用して冷却速度を変えることにより試料に乱れを導入することができる。本研究では、異方的導体における乱れの影響を明らかにするために、(TMTSF)_2ClO_4の金属及びSDW相において磁気抵抗、磁化率等を詳細に測定した。 その結果、磁化率測定より求めた磁場侵入長の温度依存性より、(TMTSF)_2ClO_4の超伝導相は有限のギャップをもつ超伝導が実現されているとの結論を得た。又、様々な冷却速度における残留抵抗の測定結果より、冷却速度と非磁性不純物散乱の関係を定量的に明らかにした。さらに、金属及びSDW相における磁気抵抗の測定を行った。その結果、SDW相における磁気抵抗の異方性はSDWギャップに伴うホールと電子の有効質量の異方性として定量的に理解できることが分かった。金属相におても大きな磁気抵抗の異方性が観測されたが、その異方性はSDW相とは逆であり、又、その異方性は低温になるにしたがって著しく増大することを見いだした。現在の時点ではこの金属相の磁気抵抗の振舞いに関して適切な解釈をもっていないが、何らかの新しい散乱機構の存在を示唆するものであるのかもしれない。 今後、様々な冷却速度における超伝導相において上部臨界磁場(H_<C2>)の測定を行い、ク-パ-対の波動関数の対称性と非磁性不純物の超伝導状態に果す役割をさらに調べるとともに、金属相の磁気抵抗の振舞いを詳細に調べ、低温で増大する磁気抵抗の異方性の起源を明らかにする。又、急冷した場合のスピン密度波相及び徐冷し強磁場を印加した場合の磁場誘起スピン密度波相におけるスピン密度波のダイナミクスを合わせて測定し低次元電子系に特徴的な超伝導相と磁気的相の関連を明らかにする。
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