1995 Fiscal Year Annual Research Report
三角格子反強磁性体に於けるカイラリティーの秩序化の研究
Project/Area Number |
07740284
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大原 泰明 東京大学, 物性研究所, 助手 (50233250)
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Keywords | 三角格子反強磁性体 / 中性子回折 / AgCrO_2 / 二次元系 / 磁気構造 |
Research Abstract |
三角格子反強磁性体に於けるカイラリティーの秩序化の研究のためにAgCrO_2の磁気構造を調べた。AgCrO_2は良い二次元三角格子反強磁性体として知られているABO_2系に属する。AgCrO_2の最近接相互作用(J_1)は反強磁性であるので磁気構造は120度三角構造になるはずである。しかしながらAgCrO_2粉末サンプルの中性子回折実験では磁気ブラッグピークが(0.327, 0.327, 0)に出現している。このことは磁気構造が不整合であることを示している。 この不整合な磁気構造の原因を探るためにAgCr_<1-x>Al_xO_2の試料中性子回折実験を行なった。AgCr_<1-x>Al_xO_2試料は科研費補助金で購入したコンピューターによって炉の温度を制御して作製した。第二近接(J_2)、第三近接相互作用(J_3)まで考慮すると不整合な磁気構造は(J_2/J_1, J_3/J_1)=(0.25, 0.125)の極近傍にのみ存在可能である。もしこれがAgCrO_2の不整合な磁気構造の原因であればAgCr_<1-x>Al_xO_2試料の磁気構造は120度三角構造となるはずである。しかしながらAgCr_<1-x>Al_xOの磁気構造はxを10%まで増やして磁気構造および相転移温度の変化は観測されなかった。10%のCrをAlと置換するということは三角格子上のCrの第二近接サイトまでのうち少なくとも一つのサイトがAlに置き換わっていることを意味する。それにもかかわらず磁気構造が変わらないことは不整合な磁気構造がJ_2、J_3相互作用の微妙なバランスによるものないことを示している。 磁気相移転点での異常はAlを加えた試料の方がむしろはっきりしている。これはAgCrO_2は磁気相転移点以下でもかなりスピンが揺らいでいるがAlを加えるとその揺らぎが抑制されると解釈できる。すなわちAgCrO_2の低温相ではカイラリティーとしては秩序化しているが個々のスピンが揺らいでいる。これがAgCrO_2の不整合な磁気構造の原因であると推定される。
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