1995 Fiscal Year Annual Research Report
分子進化学的手法を用いた、C型肝炎多発地域におけるHCVの家族内感染の有無の検討
Project/Area Number |
07770354
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
石橋 正道 山形大学, 医学部, 助手 (30261697)
|
Keywords | C型肝炎ウイルス(HCV) / 夫婦間感染 / 分子系統樹 / genotype / HCV感染多発地区 |
Research Abstract |
1.平成3年度から開始した、山形県川西町におけるHCV感染実態調査により、既に補足しているHCV抗体陽性者1021名から、夫婦ともにHCV抗体陽性の18組36名を無作為に選び、HCV RNAのgenotypeをスマイステストHCV genotype TMを用いて決定した。また、18組の夫婦の血清からHCV RNAを抽出して、complementary DNA(cDNA)を作成し、このcDNAを鋳型としてHCVのEnvelope1(E1)領域のプライマーを用い、Reversed transcription nested polymerase chain reaction(RT-nested PCR)を行い、HCV RNAのE1領域を増幅した。増幅産物の塩基配列を決定し、さらにneighbor-joining法により分子系統樹を作成した。2.その結果、genotypeが1bの夫12名の妻のgenotypeが、同じ1bだったのは7名(58.3%)、genotypeが2bの夫6名の妻のgenotypeが、同じ2bだったのは3名(50%)であった。すなわち夫婦18組のうち、genotypeが一致した夫婦は10組(55.6%)であり、約半数が一致していた。しかし、E1領域の塩基配列を決定できた10組の夫婦の塩基配列のホモロジーの平均値は92.2%であり、夫婦でない男女の組合わせ24組の塩基配列のホモロジーの平均値90.9%と比較して、統計学的に有意な差はみられなかった。分子系統樹でみると、2組の夫婦のHCV RNAの位置は比較的近く、夫婦間での感染が否定できなかったが、残る8組の夫婦の位置は極めて遠く、夫婦間の感染の可能性はないものと考えられた。3.HCV感染多発地区での検討では、夫婦間にHCV抗体陽性者の集積性のあることが報告されているが、今回の我々の検討では、HCVの夫婦間感染を積極的に支持する結果は得られなかった。夫婦は生活基盤が同じであり、ほぼ同年齢階層であることから、同じ行動様式をとることが多いと思われる。HCV感染の危険性が高い地域では、このためHCVの感染源を共にする可能性が高く、これが結果的に夫婦間の高い集積性となって表れるものと考えられた。
|