1995 Fiscal Year Annual Research Report
補体の膜侵襲複合体が表皮増殖を促す可能性についてのin vitroでの検討
Project/Area Number |
07770638
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西條 忍 東北大学, 医学部・付属病院, 助手 (90215525)
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Keywords | 補体 / 表皮角化細胞 / CD59 / WST-1アッセイ |
Research Abstract |
補体の供給源としては、まず血清を用い、C3-NeF(補体の傍経路を活性化させる自己抗体)の添加によりin vitroでの膜侵襲複合体(membrane attack complex=MAC)形成を促すこととした。血清のみの添加により、非働化の有無にかかわらず濃度依存性に(WST-1アッセイで調べた)増殖が促進されたので、正常モルモット血清・正常ヒト血清・C9欠損ヒト血清それぞれの濃度を1%という低値に固定し、血清の非働化の有無・C3-NeF添加の有無による細胞増殖の変化を調べた。その結果、非働化していない正常モルモット血清を用いた場合のみに、C3-NeF添加による増殖の促進が観察された。非働化(56°30分加熱)した血清ではC3-NeFによる増殖の変化はもたらされなかった。また、ヒト血清では、そのような変化はみられなかった。 つぎに、培養中のヒト表皮ケラチノサイトのCD59発現状況をflow cytometryで検討した。その結果、100%の細胞がCD59を発現していることがわかった。さらに、血清を添加した培地で培養したヒト表皮ケラチノサイトではより強くCD59を発現する傾向があった。この発現の強さは、血清の非働化の有無で差異を生じないことから、補体ではなくCaの濃度上昇に伴う細胞の分化がCD59の発現を促進している可能性があるとおもわれた。 ヒト表皮ケラチノサイトは、Phosphatidylinositol phospholipaseC(PIPLC)を添加した培地での30分間のインキュベートにより、CD59の発現が大幅に減弱した。しかし、このCD59の発現が減弱したヒト表皮ケラチノサイトでも、新鮮正常ヒト血清を含む培地でC3-NeF添加による増殖の促進はみられなかった。 以上から、ヒト表皮ケラチノサイト上に異種動物のMACを実験的に形成されて細胞の増殖を刺激することができる可能性はあるものの、CD59に妨げられてヒトのMACは形成されにくいし、細胞の増殖も起こらないと判断し一連の実験を終了した。
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