1995 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病患者血中糖化蛋白の大動脈平滑筋細胞におけるPGI_2産生・増殖に及ぼす影響
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07770850
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
藤本 良士 産業医科大学, 医学部, 助手 (20269054)
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Keywords | 糖化蛋白 / 血管平滑筋 / プロスタグランディン / 糖尿病性血管症 |
Research Abstract |
[目的]糖化蛋白は糖尿病血管症の一因である。糖尿病患者や糖尿病実験動物において、血管壁や血管内皮細胞からの動脈硬化抑制因子であるPGI_2産生が抑制されている。本研究は血管平滑筋からのPGI_2産生におよぼす糖化蛋白の影響についての検討である。 [方法]実験には、Rossらの方法に準じrat大動脈平滑筋細胞(VSMC)を、10%CS加DME培養液で継代培養した。VSMCを24穴プレートに2×10^6cell/wellずつ播き、各種ヒト血清を20%を含むDME1mlを添加し、12時間培養後、上清中のPGI_2の代謝産物である6ketoPGF_<1α>をした。PGI_2産生刺激物質として添加した血清は、(1)正常ヒト血清(Normal)、(2)ブドウ糖添加ヒト血清(+Glucose)、(3)化ヒト血清(Glycated)の3種類である。糖化ヒト血清は正常人より採取した血清にブドウ糖(500mg/dl)を添加し、37℃に7日間孵置して作成した。糖化以外の条件を一定にするため、正常ヒト血清も37℃に7日間静置し、ブドウ糖添加ヒト血清はこの正常ヒト血清にブドウ糖を最終培養直前に添加(500mg/dl)したものを用いた。 [結果]1.VSMCからの6ketoPGF_<1α>産生は血清添加後上昇し、12時間でプラトーとなった。 2.6ketoPGF_<1α>産生は添加血清の濃度依存性(10%〜50%)に増加した。 3.6ketoPGF_<1α>産生をNormal serumとGlycated serum添加で比較すると、Normal 7554±1081pg/ml(mean±SEM、n=4)、Glycated 4598±394pg/mlとGlycated serum添加にて6ketoPGF_<1α>産生は39.1%低下した(p<0.05)。 4.ブドウ糖添加血清との比較でも6ketoPGF_<1α>産生は、Glycated866.1±110.4pg/ml(mean±SEM、n=6)、+Glucose1674±122pg/mlと44.4±12.3%低下した(p<0.02)。 [結論]VSMCからのPGI_2産生は血清中の糖化蛋白の増加により抑制されていた。PGI_2は血管平滑筋弛緩、血小板凝集抑制に作用する。今回の我々の結果は糖尿病における血栓形成傾向と血管合併症の関連を考える上で極めて興味深い。糖化蛋白の性格について、現在さらに検討中である。血管壁(内皮細胞)からのPGI_2産生は糖尿病患者血清と培養すると低下し、これは血糖と相関していることが知られる。今後、1.糖尿病患者血清をVSMCに添加し6ketoPGF1_α産生抑制とHbA_<1C>、フルクトサミン値の関係について。2.患者血清中のPGI_2産生抑制物質の分析を行う予定である。
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