1995 Fiscal Year Annual Research Report
いわゆる“炎症性"腹部大動脈瘤の発生におけるコラゲナーゼの関与に関する検討
Project/Area Number |
07770975
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
折口 信人 (財)東京都老人総合研究所, 臨床病理部門, 助手 (90250191)
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Keywords | 炎症性腹部大動脈瘤 / マトリックスメタロプロテアーゼ |
Research Abstract |
1,まず最初に、ヒトの炎症性腹部大動脈瘤に対する病理組織学的検討について報告する。対象は、平成7年5・6月に東京大学第一外科において手術された腹部大動脈瘤5例である。各症例の最大拡張部および中枢側吻合部近傍より瘤壁を採取し、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)-1,2,3,9に対する免疫染色を施行した。その結果、MMP-2,3は陰性であったが、MMP-1は炎症性および動脈硬化性瘤壁全体にほぼ一様に間葉系細胞やマクロファージに陽性であった。一方、MMP-9は炎症性瘤の線維性に肥厚した外膜には認められず、最外側のやや粗となった外膜脂肪織中にのみ陽性であった。これに対し、動脈硬化性瘤では外膜に散在性に陽性細胞(好中球やマクロファージ)が認められた。次に、上記瘤壁に対するゼラチンザイモグラフィーを施行した結果、炎症性瘤壁では動脈硬化性瘤壁に比して変性MMP-9と思われる約45kDaのバンドが強く検出された。以上より、炎症性瘤壁では動脈硬化瘤壁に比してMMP-1および変性MMP-9が強く発現しており、これらのMMPが瘤壁の炎症機序に関与していることが示唆された。 2,次に、動物実験による検討について報告する。露出したウサギの腹部大動脈周囲にエラスターゼを投与・浸潤させることにより大動脈径は約1.6倍に拡張したが、炎症性瘤類似の壁肥厚は認められなかった。また、コラゲナーゼ投与では大動脈にあまり変化はなく、今後の更なる検討が必要である。
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