1995 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞抗原レセプター遺伝子導入による悪性グリオーマ遺伝子治療に関する研究
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07771121
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
黒須 昭博 順天堂大学, 医学部, 助手 (10195589)
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Keywords | 悪性グリオーマ / T細胞レセプター / TCR / 腫瘍浸潤リンパ球 / TIL |
Research Abstract |
(1)研究計画I)について、12例の悪性グリオーマの手術標本を用いて、RT-PCR法により、腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL)のT細胞レセプター(TCR)のα,β鎖のV領域の遺伝子発現を調べた。V領域のレパートリーの中でVα7とVα13が12例中6例に発現し、Vβ13.1が9例に発現した。このことは末梢血リンパ球と比較して、悪性グリオーマの組織中には、限られた特定のTCRを持つリンパ球が選択され、末梢血から流入している可能性が示唆された。また11例の患者のMHCのハロタイプを検索し、HLAのクラスIのA24 (9)が8例に認められ、有意に高頻度であった。 (2)計画II)で企図した悪性グリオーマに対するキラー活性を持つT細胞クローンの確立は未達成であり、メラノーマとは異なり、グリオーマから分泌されるIL10などの免疫抑制因子の関与を疑っている段階である。 (3)計画III)に従って、計画I)で得られた特定のV領域を持つTCRのcDNAをM13ファージに組み込み、大腸菌TG1を用いて増幅し、得られたクローンのシークエンスを行い、抗原に対する特異性に最も富み、多様性のある(D)-J境界領域の遺伝子配列を分析した。計画I)で示したVα7を持つTILの患者では、個々の症例ごとに共通したアミノ酸配列を示し、その中で症例を通して(D)-J境界領域にアルギニンを持つクローンが有意に多かった。Vβ13.1では、個々の症例の中だけでなく各症例に渡り共通した(D)-J境界領域のアミノ酸配列が得られた。-文字表記でYRLPWGTSDSの9個である。以上から、T細胞レセプターからみた悪性グリオーマの共通抗原の存在の可能性が示唆され、今後も検討していきたい。 (4)計画IV)のキラー活性を持つT細胞クローンの確立は、上記のごとく未達成であり、進行していない。 (5)計画V)の悪性グリオーマ特異的TCRのcDNAの末梢リンパ球への遺伝子導入は、まだベクターの調節などの準備段階にある。
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