Research Abstract |
ウサギ下腿を一期的に延長した。実験にもちいる脚延長量を検討するため脚延長直後の下腿筋群の筋節長を測定したところ,筋節の伸び率は筋の種類によって異なることがわかった。これは筋が固有の内部構築をもつためではないかと推測した。そのため実験方法を変更し,前脛骨筋と腓腹筋内側頭における脚延長前と延長直後の筋肉長,筋線維長,筋節長を測定することにした。 右下腿を延長側,左下腿を対照側として脚延長直後に両側ともに一定肢位にてホルマリン固定後,筋を分離して筋肉長を測定した。その後,硫酸にて結合繊を消化して鏡視下に20から50本程度の筋線維の束を分離して筋線維長を測定した。筋節長は分離した筋線維をもちいてレーザー光回折によって算出した。 対照側の脛骨長は平均115.0mm,前脛骨筋の筋肉長,筋線維長,筋節長それぞれの平均は76.0mm, 53.4mm, 2.15μmであり,腓腹筋内側頭では79.7mm, 19.4mm, 2.07μmであった。延長側の脛骨長は平均121.2mm,前脛骨筋の筋肉長,筋線維長,筋節長それぞれの平均は81.5mm, 58.6mm, 2.35μmであり、腓腹筋内側頭では85.5mm, 25.0mm, 2.61μmであった。 脚延長術によって脛骨を約5.5%伸ばした場合,筋肉,筋線維,筋節それぞれの伸び率は前脛骨筋では約7%,10%,10%であり,腓腹筋内側頭では約7%,25%,25%である。この事実は,筋節の伸び率は筋線維の伸び率とほぼ等しい関係にあり,筋肉の伸び率とは一致しないことをしめしている。また,筋肉は前脛骨部と腓腹筋内側頭でほぼ等しい長さで伸び率も差がないが,筋線維は腓腹筋内側頭のほうがたくさん伸ばされることがわかる。これは筋の内部構築の違い,特に筋肉長にたいする筋線維長の割合が前脛骨筋は約70%であるのに対し腓腹筋内側頭は24%と小さいためと考られた。
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