1995 Fiscal Year Annual Research Report
脳内微小透析法を用いたアミノ酸動態と麻酔の作用機序に関する研究
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07771271
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
村田 順子 東京女子医科大学, 医学部・麻酔科 助手 (30210040)
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Keywords | 脳内微小透析法 / ケタミン / 光学異性体 / グルタミン酸 / グルタミン |
Research Abstract |
本研究ではラットを用い、背側海馬を対象として実験を行った。ケタミンは全身麻酔薬として一般にラセミ体で用いられているが、S(+)体とR(-)体では、麻酔・鎮痛効果に差があることが報告されている。そこでケタミンの光学異性体間で、行動および興奮性アミノ酸伝達系に与える影響に差があるかどうかを、脳内微小透析法を用いて無麻酔・無拘束条件下に検討した。グルタミン酸およびその代謝・再利用に関与していると考えられるグルタミン含量を高速クロマトグラフィーで計測した。ケタミンはそれぞれ40mgと100mgの全身投与について検討した。実験は人工脳脊髄液(ACSF)で灌流条件下の基礎遊離値と、高カリウム含有ACSF灌流による脱分極性刺激時の反応性について、薬物投与前後で比較を行った。 行動観察上、鎮静・鎮痛作用は用量依存傾向を認めたが、異性体間ではS(+)体がR(-)体より強い傾向が認められた。グルタミン酸・グルタミンとも薬物投与の前後で基礎遊離量に変化を認めなかった。薬物投与後の脱分極刺激によりグルタミン酸は増加する例が多く、この遊離増強反応はいずれの群でも40mg投与に比べ100mg投与例でより強く認められ、またラセミ体とR(-)体は同程度であり、S(+)体で弱い傾向を認めた。一方グルタミンは薬物投与前後で脱分極刺激に対する反応性に明らかな変化を認めなかった。 従来の報告と同様にR(-)体に比べS(+)体に強い鎮痛・鎮静効果が認められたが、脱分極刺激によるグルタミン酸遊離の増強効果は逆にS(+)体で強かった。従ってこの増強効果はケタミンの鎮痛・鎮静効果を直接反映したものではないと考えられた。今後はNMDAチャンネル遮断作用との関連や、GABA作動系に対する影響についても検討し、ケタミンの中枢内興奮性・抑制性神経系に及ぼす影響について総合的に理解する糸口を見い出したい。
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