1995 Fiscal Year Annual Research Report
歯髄細胞から象牙芽細胞への誘導機構に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
07771756
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柴 秀樹 広島大学, 歯学部, 助手 (60260668)
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Keywords | 歯髄細胞 / 象牙芽細胞 / 成長因子 / TGF-β / オステオネクチン / mRNA |
Research Abstract |
歯髄細胞の象牙芽細胞への誘導機構を解明するために,成長因子(TGF-β,PDGF-AB,bFGF,EGF,IL-1β,TNF-α)が歯髄細胞のオステオネクチン産生に及ぼす影響についてヒト歯髄細胞培養系を用いて検討し,以下の結果を得た。 (1)[^3H]サイミジンの細胞への取り込みによって細胞増殖能を調べた結果,TGF-βは歯髄細胞のDNA合成を濃度依存的に促進した。 (2)マウス抗ウシオステオネクチンモノクロナル抗体を用い,サンドイッチELISA法により歯髄細胞のオステオネクチン産生に及ぼすTGF-βの影響を分析した結果,TGF-βは著しくオステオネクチン産生を増加させた。さらに,オステオネクチンのウェスタンブロットでは,オステオネクチンは38kDa付近に発現し,TGF-βによって著しく増加し,ELISAから得た増加に一致していた。 (3)ウシオステオネクチンのcDNAをプローブとしてオステオネクチンのmRNAをノーザンブロット法によって分析した結果,TGF-βによってmRNA(major band, 2.2kb; faint band, 3.3kb)は増加していたけれども,蛋白レベルでの増加ほど多くなかった。 (4)PDGF-AB,bFGF,EGF,IL-1βおよびTNF-αはオステオネクチンの産生を減少させた。 以上,TGF-βは歯髄細胞の増殖を促進し,オステオネクチンの発現を翻訳の前段階および後段階で調節し増加させることが明らかとなった。さらにin vivoについて考察するとcondensed dental mesenchymeのような未分化な細胞は増殖能が高く,一方象牙芽細胞は増殖能が低いこと,さらにオステオネクチンは未分化な細胞には認められないが,象牙芽細胞には発現していることから,TGF-βは未分化な歯髄細胞に作用して増殖を高めるのに対して,分化した象牙芽細胞に対しては,オステオネクチンの産生を増加させ象牙質形成に関与していることが考えられた。このように,TGF-βは歯髄細胞から象牙芽細胞の誘導に重要な役割を担っている因子であることが示唆された。
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