1995 Fiscal Year Annual Research Report
動脈硬化巣を認識するモノクロナル抗体を用いた動脈硬化形成機構の解析
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07772185
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
森 雅博 帝京大学, 薬学部, 助手 (00230079)
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Keywords | 動脈硬化 / モノクロナル抗体 / phosphatidylcholine |
Research Abstract |
昨年、動脈硬化病巣表層部を認識するASHla/256C抗体の抗原物質が、不飽和脂肪酸を含有するホスファチジルコリン(PC)であることを明らかにしたが、本年度は、(1)抗原物質としてのPCの構造活性相関、(2)PCの抗原性を増強する物質の探索、(3)動脈硬化巣に存在する抗原性を増加させる物質の分離、特にこの3点について研究した。その結果、(1)種々のPCの中では、1-stearoyl-2-linoleoyl PCが、最もASHla/256C抗体と反応性が高く、dilinoleoyl PCがこれに次いだ。オレイン酸やアラキドン酸を含むPCも反応したが、反応性はそれほど高くなく、不飽和結合の数と反応性には相関がなかった。不飽和結合はPCの立体構造への寄与していると考えられた。(2)動脈硬化巣内膜肥厚部には多量の中性脂質が蓄積しており、本抗体は内膜肥厚部の細胞間マトリックスを染色する。そこで、本抗体と全く反応しないtriglyceride (TG), cholesterol ester (CE)を一定量PCと共存させて、抗体の反応性を調べたところ、PC: TG or CE=1:2〜2:1の範囲で、PCの抗原活性が8〜10倍に増加した。中性脂質が抗原活性を増強すことを確認した。(3)動脈硬化巣の内膜肥厚部から脂質を抽出して、Hexane, 2-Propanol, waterの溶媒でシリカゲルカラムを用いて抗原を分離すると、抗原であるPCは水11.2%付近に溶出するが、それ以外の画分は本抗体とは反応しない。この「それ以外の画分」とPCとを共存させて、本抗体の反応性をみると、水2.2%付近に溶出するピークと、水7.8%付近に溶出してくる画分が、PCの抗原活性を増強する性質を持つことを確認した。前者のピークを分析すると、大部分は、TG, CEであった。このPC抗原複合体は、動脈硬化巣で泡沫化したマクロファージの崩壊してできる脂質粒のモデルとも考えられるので、次年度は、実際に抗原物質複合体を分離して、その成分と動脈硬化との関連について検討したい。
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