1995 Fiscal Year Annual Research Report
核反応法によるライナー被覆管の二次水素化に関する研究
Project/Area Number |
07780435
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高木 郁二 京都大学, 工学研究科, 助教授 (20206717)
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Keywords | 軽水炉 / 被覆管 / ジルカロイ / ライナー / 二次水素化 / 核反応法 / 固溶限 / ジルコニウム |
Research Abstract |
わが国の沸騰水型軽水炉(BWR)では燃料の高燃焼度化などを目的として、純ジルコニウムを内張りしたジルカロイ被覆管が採用されつつある。この複合材料でできた被覆管の二次水素化に関する研究例は僅少であるため、本研究では、実際に用いられている未照射被覆管を用い、ジルカロイとジルコニウムのどららに水素が集まり易いかを実験的に調べた。 温度400℃で被覆管に重水素を1原子%程度吸蔵させ、その後、1℃/minで序冷した試料と、水に浸して急冷した試料を作成した。これら2種類の試料を、イオンビーム分析法の一つである核反応法を用いて分析し、半径方向の重水素の濃度分布を得た。その結果、急冷した試料では重水素が均一に分布していたのに対し、序冷した試料では、多量の重水素がジルコニウム側に存在していた。 急冷した試料では、重水素を吸蔵させた状態での重水素の分布が保存されていると考えられるため、序冷試料で見られた不均一な分布は、冷却中に生じたものである。冷却速度を変えて実験を行った結果、この不均一な分布は、ジルカロイとジルコニウムで重水素の固溶限が僅かに異なるためであることがわかった。ジルコニウムの方が固溶限が低いため、先に水素化物が生成し、拡散可能な重水素がジルカロイからジルコニウム側に移動していったと考えられる。 ジルカロイとジルコニウムにおける水素の固溶限が僅かに異なることは知られてはいたが、そのことがライナー被覆管中の二次水素化や水素の分布に影響を及ぼし得ることを、本実験研究は初めて示した。
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