1995 Fiscal Year Annual Research Report
トランジェニックマウスを用いたカルモジュリン遺伝子の神経特異的な発現の解析
Project/Area Number |
07780726
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
池島 宏子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (60265783)
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Keywords | カルモジュリン / プロモーター / トランスジェニックマウス / in situ ハイブリダイゼーション / ベータガラクトシダーゼ / 大脳 / 小脳 / 脊髄 |
Research Abstract |
ラットCaMIIIの-877から+103までの領域は培養細胞において十分高いプロモーター活性を示した。CaMIIIの-410近傍にはCaMIIで種を超えて高く保存されている34bpの塩基配列(H3領域)が含まれている。我々はCaMIIIの-877から+102までの下流にレポーター遺伝子lacZをつなぎ、この領域の組織特異的なプロモーター活性をトランスジェニックマウスを用いて検討した。組織切片における導入遺伝子の発現をベータガラクトシダーゼの活性によって、また内在性のCaMIIIの発現部位をin situハイブリダイゼーション法を用いて発生段階を追って比較分析した。 脊髄においては、胎児13.5日目では腹側領域の前角における発現は強く、その他、後根神経節や三叉神経節、交感神経節においても発現が認められた。成体の時期の脊髄では前角の運動ニューロンや後角の小さい細胞を含めたほとんどのニューロンで発現が認められた。小脳では、新生時期から生後9日目には導入遺伝子はPurkinjie細胞において強い発現が認められ、内顆粒層では弱い発現であった。成体マウスになるとPurkinje細胞と共に顆粒細胞層においても発現が増強された。大脳では生後2日目には海馬と大脳皮質の錘体細胞において発現が検出された。さらに9日目には海馬のCA1からCA3の錘体細胞と歯状回の顆粒細胞に1acZの発現が限局しており、その分布が成体に至るまで継続して検出された。以上の神経系における導入遺伝子の発現は、内在性のマウスCaMIIIの発現と良い一致が見られた。 これらの結果よりラットCaMIIIの-877から+103までのプロモーター領域が神経系特異的な発現を制御していることが明らかとなった。我々はこれまでにCaMIIの中枢神経系にける発現を再現するためには、CaMIIの-294から+68までの領域のみならずさらに上流にあるH3領域が必要であることを予想していた。本研究結果は、CaM遺伝子群の神経系における発現の「H3領域」の必要性を示した。
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