1997 Fiscal Year Annual Research Report
出土木材の保存処理における基礎的研究-薬剤の化学吸着を中心として-
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07831016
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Research Institution | Gangouji Institute for Research of Cultural |
Principal Investigator |
植田 直見 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (10193806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大国 万希子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (40250352)
井上 美知子 (財)元興寺文化財研究所, 保存科学センター, 研究員 (70223279)
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Keywords | 吸着 / 陽イオン界面活性剤 / 浸透 / 樹種 / 劣化状態 / 含水率 / 木材分析 / 赤外分光分析 |
Research Abstract |
前年吸着量を測定したのと同様の出土材を凍結乾燥し、陽イオン界面活性剤の水溶液に浸漬し一定時間毎の吸着量を測定した。その結果、飽和吸着量に達するまでの時間は薬剤の濃度にほぼ比例することが判った。この時間は、陽イオン界面活性剤の種類によって異なるがいずれも濃度との相関関係が見られた。さらに、吸着しない薬剤を高濃度(40%)溶液に浸漬しその重量変化を追跡することで、薬剤の浸透性を検討した。その結果、針葉樹と広葉樹で一部の薬剤に浸透性の違いが見られた。しかし、浸透量および平衡時間については、薬剤の分子量や性質ではなく出土材の樹種や劣化状態に影響されることがわかった。 また、吸着が見られた薬剤についてはそれを吸着させた後、PEGを浸透させ吸着薬剤の種類およびその有無によるPEGの浸透性を検討した。その結果、吸着剤の存在によりPEGの浸透性が大幅に向上した。この結果は特に、広葉樹の一部について、ある一定の樹種および劣化状態のものに顕著に見られた。 次に、前年も検討している木材分析、含水率、赤外分光分析などから測定した木材の劣化状態と吸着量の関係については、前年までの結果および本年度の結果もあわせて検討した。その結果、樹種および劣化状態と吸着量に一部相関関係は認められたが全ての出土材に共通な関係を導き出すまでには至らなかった。今後も多種多様な出土材について同様な実験を行い保存処理薬剤全般について基礎的な関係を明らかにしたい。
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