1996 Fiscal Year Annual Research Report
中枢疾患に伴う声の変動特性と可制御性に関する非線形理論に基づく研究
Project/Area Number |
07832006
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
今泉 敏 東京大学, 医学部, 助教授 (80122018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新美 成二 東京大学, 医学部, 教授 (00010273)
桐谷 滋 東京大学, 医学部, 教授 (90010032)
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Keywords | 音声障害 / 中枢性音声障害 / 痙攣性発声障害 / 声の変動特性 / 声の可制御性 / 音響分析 / フラクタル次元 / 非線形性 |
Research Abstract |
理想的な発声機能は、必要なときに希望の高さと強さで望むところの声質を特定の時間構造で生成できる機能である。課題を楽な高さ、強さで母音を持続発声することに限っても音声障害患者には難しいことが多い。本研究では、声の基本周波数と振幅を意図通りに制御する能力、声の可制御性を音響解析的に評価するシステムを試作し、実験を通してその可能性を確認した。まず、各種音声疾患による声の可制御性の変化を比較検討するため、音声振戦、痙攣性発声障害、ラインケ浮腫、反回神経麻痺、声帯ポリ-プ患者などの定常発声音声を対象に、基本周波数及び振幅の変動率や変動の速さ、規則性を解析した。その結果、疾患群は健常者音声に比較して、基本周波数及び振幅の変動率が大きく、声を一定に保つ能力は低かった。ラインケ浮腫などでは速いゆらぎや喉頭雑音が大きいのに対し、音声振戦や痙攣性発声障害では比較的遅いゆらぎが大きく、声帯の形態的変化による音声障害と神経系が関与する音声障害では声の変動特性に差があることが示唆された。次に、神経制御が関与すると疑われる痙攣性発声障害を対象に声の変動特性とその非線形性を検討した。話声位とそれよりも高い声域(歌声域)で可及的に長く発声した持続単母音を解析した。その結果、聴覚的に痙攣が無いと判断された音声区間でも声のゆらぎは健常者のそれと比較して有意に大きな値を示し、痙攣が生じていない区間でも声の高さ、強さを特定値に保つ能力は低下していること、その低下は発声モードに依存していること、声のゆらぎが一定値を越えたときにカオス的な変化が生じそれが痙攣性の変動となって発現すること、などが示唆された。今回開発したシステムで音声の変動特性とその非線形性を多方面から調べることが可能であり、特にそれは神経系に起因する音声障害の評価に有用であることが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Imaizumi,S.,et.al.: "Listener Adaptive Characteristics of Vowel Devoicing in Japanese Dialogue" J.Acoust.Soc.Amer.98. 768-778 (1995)
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[Publications] Shimura,Y.and Imaizumi,S.: "Listener and Context Dependency in the Perception of Emotional Aspects of Infant Voice" Acta Paediatrica Japonica. 38. 648-656 (1996)
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[Publications] Hirose,H.,Imaizumi,S.and Yamori,M.: "Voice Quality in Patients with Neurological Disorders" Vocal Fold Physiology,Voice Quality Control. 235-248 (1995)
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[Publications] 今泉敏他: "声の変動特性-音響分析による評価-" 喉頭. 8. 116-122 (1996)
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[Publications] 今泉敏: "ことばの記録と評価" JOHNS. 12. 835-840 (1996)
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[Publications] 今泉敏: "病的音声の声質" 日本音響学会誌. 51. 887-892 (1995)