1997 Fiscal Year Annual Research Report
肉食性腹足類の種内および種間関係-窃盗害生を中心として
Project/Area Number |
07836014
|
Research Institution | Osaka International College For Women |
Principal Investigator |
阿部 直哉 大阪国際女子短期大学, 国際文化学科, 助教授 (20222656)
|
Keywords | 種間関係 / 窃盗寄生 / 海洋生態学 / 潮間帯 / タイドプール / 腹足類 / アクキガイ類 / ヒバリガイモドキ |
Research Abstract |
和歌山県西牟妻郡白浜町番所崎のヒバリガイモドキ(以下、ヒバリと略記)が優占するタイドプールには、アクキガイ科の5種の肉食性巻貝が生息している。平成7〜9年度にわたり、これらの種間および種内関係を明らかにするため、室内・野外実験を行うと共に、野外に水中ビデオを設置してビデオによる行動解析を行った。その結果、以下の点がほぼ明らかとなった。 1.シマレイシガイダマシ(以下、シマと略記)とレイシガイダマシはヒバリの殻に穿孔するタイプの捕食者である。 2.イボニシC型(以下、イボと略記)はヒバリの殻間から吻を挿入するタイプの捕食者であると同時に、他種や他固体の食い残したヒバリを腐食し、さらには、シマやダマシの捕食中の餌を横取り(窃盗寄生)する。 3.ヒメヨウラクガイ(以下、ヒメと略記)とウネレイシガイダマシ(以下、ウネと略記)はほとんどヒバリの捕食は行わず、専ら、腐食や窃盗寄生を行っている。さらに、ヒメは他種を捕食すると思われる。 4.実験下で、ヒメ、ウネをシマと共存させると、成長量が増加し、利益を得ていると考えられた。一方、シマはイボ、ヒメ、ウネなどから寄生された状態でも、成長量が減少しない。これは、捕食回数を増大させることで、餌の横取りによる摂餌量の減少を補償しているためと推察された。 このように、ヒバリガイモドキ床では、ヒバリガイモドキを餌として、5種の肉食性巻貝の種間・種内で非常に複雑な関係が見いだされた。その中で、窃盗寄生が重要な役割を果たしていると考えられるが、これは海洋無脊椎動物群集では稀な現象として注目される。
|