1995 Fiscal Year Annual Research Report
慢性甲状腺炎におけるC型肝炎ウイルスの役割-RT-in situ PCRの応用
Project/Area Number |
07857015
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
藤井 丈史 自治医科大学, 医学部, 助手
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Keywords | 慢性甲状腺炎 / C型肝炎ウイルス / RT-in situ PCR |
Research Abstract |
慢性甲状腺炎を含む濾胞形成性甲状腺炎の病態発生に関わるHCVの役割を検討するために、まず甲状腺疾患患者におけるC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性率の実態調査を行った。1991年から1995年までの5年間に自治医大付属病院で甲状腺切除が施行された患者は308名(HCV抗体陽性10名、陰性204名、未検46名、不明66名)で、このうち濾胞形成性甲状腺炎を呈したのは18名(HCV抗体陽性2名、陰性10名、未検3名、不明3名)であり、慢性甲状腺炎患者(16.7%)ではHCV抗体陽性率が高い傾向が認められた。次に予備実験としてC型慢性肝炎5例、HCV抗体陰性のB型肝炎3例、原発性胆汁性肝硬変2例の肝生検を対象としてRT in situ PCRの反応条件を検討した。通常のISH法、RTin situ PCRの直接法と間接法を行い、後二者ではプライマーを含まない陰性対照を置いた。HCV増幅領域として5'-UTRを用い、プライマーや温度条件以外はMartinezら(J Histochem Cytochem 43:739-47)に準拠した。MJ Research社のサーマルサイクラ-にスライドグリドルを載せ、この上に載せたスライドガラス上で42℃50分RTを行い、PCR(90℃30秒,55℃30秒,70℃1分,12サイクル)で増幅した。陽性所見は細胞質に認められ、CPH例では直接法、間接法とも細胞質にきれいな陽性像がみられた。しかしながら直接法では核に非特異反応が強く出現する傾向がみられ、同一検体であっても切片間にばらつきが出るなど不定の結果もみられた。現時点ではHCVに対するRT in situ PCRは十分な感度と特異性を安定して得るには至っているとは云えない。このため、今回は肝生検での予備実験のみにとどまったが、サイクル数、温度条件などの変更を加えてその至適条件を確立することは非常に有意義な結果をもたらすものと考えられ、今後の発展が期待される手技と考えられる。
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