1995 Fiscal Year Annual Research Report
脱アセチル化キチンのアセチル基のシークエンス長と水溶性の関係
Project/Area Number |
07858066
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
川井 忠智 工学院大学, 工学部, 助手 (00245648)
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Keywords | キチン / キトサン / 脱アセチル化 / シークエンス分布 / 組成分布 |
Research Abstract |
1.近年、キチン・キトサンの高機能性材料としての研究が盛んとなってきた。しかし、その分子特性についてはあまり注意が払われていない。脱アセチル化度約50%の脱アセチル化キチンにおいて、不均一系脱アセチル化物は水不溶性であり、膨潤状態の擬均一系合成の場合は水溶性を示す。そこで本研究は、種々の脱アセチル化度のキチンを合成し、そのN-アセチル基の分子内配列ならびに分子間の分布を決定し、これらから、キチンの水溶性のメカニズムを明らかとすることを目的とした。 2.試料調整-種々の脱アセチル化度のキチンの合成 アセチル基の分布が、ブロック的に分布する試料とランダム的に分布する試料の合成を行った。 ブロック的に分布する試料の合成は、60%-NaOHにキチン(片倉チッカリン製カニ由来)を懸濁させた後、アルカリ農奴10%キチン濃度1%とした。この懸濁液を、窒素雰囲気下攪拌しながら25°Cならびに60°Cで脱アセチル化反応を行った。所定時間毎に分取し、中和、透析・脱塩後、回収した。回収は、冷アセトンにて沈殿させる方法と、凍結乾燥により回収する方法を行った。 ランダム的に分布する試料の合成は、まず、キトサン(片倉チッカリン製カニ由来)を酢酸-エタノール溶液に4°Cにて均一に溶解させた。これに所定量の無水酢酸を添加し、25°Cで3時間反応させた。系を0°Cにした後、KOH-エタノール溶液を徐々に加え、0-アセチル基を脱離した。この後、中和、透析・脱塩後、凍結乾燥して回収した。 合成した試料は、滴定法と赤外吸収スペクトル法で組成を決定し、極限粘度法により分子量を見積もった。 3.アセチル基の分布がブロック的に分布する試料は、反応時間の増加に伴い脱アセチル化度が上昇し、60°Cの系がより短時間で脱アセチル化した。分子量は、反応時間の増加に伴い減少し、60°C系がより激しく減少した。また、アセトンにて沈殿回収した試料よりも凍結乾燥により回収した試料の方に、やや分子量の低下が認められた。これは、アセトン沈殿させた時に分子量分別が起こり、高分子量のみが沈殿し低分子量領域が分別された結果と考える。 ランダム的に分布する試料は、無水酢酸添加量の増加に伴いアセチル化度が上昇した。分子量については、ほとんど変化は認められなかった。 以上、反応条件を変え組成の異なる試料を合成し、組成と平均分子量の関係求めた。当初の目的を達成するに至っていないが、現在、引き続き、N-アセチル基の分子内配列ならびに分子間の分布を解析中である。
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