2007 Fiscal Year Annual Research Report
日韓における戦没者追悼施設の伝統と近代的変容-国立墓地と靖国神社・千鳥ヶ淵戦没者墓苑を中心として-
Project/Area Number |
07F07004
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
島薗 進 The University of Tokyo, 大学院・人文社会系研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池 映任 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 靖国神社 / 千鳥ヶ淵戦没者墓苑 / 国立墓地 / 戦没者追悼施設 |
Research Abstract |
本研究は国立墓地と靖国神社、千鳥ヶ淵戦没者墓苑を中心として日韓における戦没者追悼施設の伝統と近代的変容を明らかにすることを目的とする。韓国をはじめとする東アジアの戦没者施設が共通して持っている特徴を示した上で、日本の戦没者追悼施設の普遍性と特殊性を明らかにすることは、従来の国家イデオロギーなどの政治枠組みから解き放ち、広くアジアの国々の中で受け入れられることを可能にする、新たな日本の戦没者追悼施設の姿を提示することができると考えるからである。まず、国家レベルにおける戦没者追悼施設の伝統と近代的変容を明らかにするために、国立墓地、靖国神国立墓地と関連する官報、国家議事録、国防部の資料の検討を行い、これと並行して、日本の戦没者追悼施設に関しては、『靖国神社問題資料集』、『千鳥ヶ淵戦没者墓苑綴り』、『千烏ヶ淵戦没者墓苑創建三十年史』、『干鳥ヶ淵関係書類』等の資料の分析を行った。その結果、日本の戦没者追悼施設とりわけ靖国神社には日本固有の伝統である怨霊信仰が根強くあり、その上で、宗教性を強く持っていることが分かり、これに反して、干鳥ヶ淵戦没者墓苑は非宗教施設として、現在は、新宗教や仏教団体などの追悼慰霊が行われるのは注目に値する。また、国立墓地は無宗教施設として、宗教の自由の認めているところは日本と大きな違いであるといえる。このような文献資料の分析とともに、国家主導で行われる国立墓地での国家儀礼の分析、宗教者によって行われる靖国神社と千烏ヶ淵戦没者墓苑での宗教的儀礼の分析を行った。国立墓地での国家儀礼は宗教者が参加するものの、儒教式で儀礼が行われ、靖国神社では神道式、千鳥ヶ淵戦没者墓苑では様々な宗教団体と遺骨取引式の際には厚生省が主催となる儀礼があり、国家と宗教の関わりについて理論的により深く分析する必要性があると考えられる。
|