2008 Fiscal Year Annual Research Report
芸術概念を超えて:日本とイタリアにおける文化財思想の比較美学的考察
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07F07005
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 温司 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TERROSI Roberto 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 保存・修復 / ミュージアム / 文化財 / 美学 / 芸術 |
Research Abstract |
研究計画として立てられたのは次の4つのプランである。1.日本とイタリアにおける「文化財」概念の比較。2.美術館・博物館の現状。3.修復・保存の理論と実践。4.茶道や生け花などのパフォーマティヴな芸術の人類学的で美学的な意味。明治・大正期から日本は西洋の美術館・博物館の制度や思想を導入してきたが、興味深い対照は、たとえば次の点であることが明らかとなった。つまり、日本において、陶磁器や漆器、織物や紙製品などといった工芸品に対しても、絵画や彫刻とほぼ同等の価値付けが与えられ、展示や保存・修復が計画されているということである。このことは、西洋の「芸術」概念との明らかな差異を示している。西洋において「芸術」は、ルネサンス以来「デッサン(ディゼーニョ)」という根本理念に基づく知的で創造的な活動として確立されてきた。ここからは、手仕事は除外される。日本において、いわゆる「デッサン」に対応するものは詩歌と結びつくものとして捉えられ、寺院や家屋を飾る装飾からは区別されてきたと考えられる。これはおそらく中国に由来するであろう。ところが、美術館はこれらの対象を一律に収集してきた。ここに日本の特徴と面白さが存するように思われる。建造物に関していうなら、西洋では時代様式の観念が極めて強いため、修復もその理念に準じているが、日本では、こうした様式概念が希薄であったように思われる。このことが、建物の保存や修復にどれだけ影響しているかは今後の課題となる。
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Research Products
(4 results)