2007 Fiscal Year Annual Research Report
超高速レーザー分光による生体関連分子系の光化学ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
07F07050
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮坂 博 Osaka University, 基礎工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MALLICK Arabinda 大阪大学, 基礎工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ノルハメン / 光増感反応 / 時間分解分光 / 励起水素結合体 / 電子移動 / 陽子移動 |
Research Abstract |
ノルハメン誘導体は、がん細胞の光治療に対する有効な光増感剤として知られている。本研究では、時間分解過渡吸収分光や蛍光分光を用いて、ノルハメン電子励起状態と、アミノ酸残基のモデル化合物との水素結合性媒体との間の相互作用、光化学反応を測定した。その結果、フェノールやシアノフェノールのような消光剤を用いた場合には、水素結合体を形成するが一般的なπ電子系水素結合体の挙動とは異なり、ノルハメンとフェノール類の間では、効率のよい電子移動は進行しないことが明らかになった。一方、水素結合を通して分子内の陽子の再配置が起こり、励起状態が失活することが示唆された。また、消光に伴い三重項状態が生成することはなかった。以上の結果からは、励起一重項からの光反応としては、水素結合を介した分子内の陽子移動による基底状態への失活課程雅趣反応であることが示された。またこれらの結果から、光増感のメカニズムには基底状態に失活した直後の陽子互変異性体などが、大きな役割を果たしていることが示唆される。次年度以降の計画としては、ナノ秒以降の過渡吸収測定によるこの基底状態に失活直後の化学種の同定、この化学種とアミノ酸残基との反応、また実際のタンパク系、あるいは核酸塩基との反応課程の直接測定を行う予定である。
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