Research Abstract |
現在実用化されている光ファイバ通信システムでは,エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)が実用化されている。EDFAは所謂レーザ増幅器であり,光複素振幅の実部と虚部に対して等しい利得を有する。しかし,これらに対応する量子力学的演算子は非可換であるため,不確定性原理による制約から3dBの雑音指数が不可避となる。 これに対して,複素振幅の実部に利得を有し,他方,虚部を減衰させる増幅器では,無雑音(雑音指数0dB)の増幅が可能となる。このような光増幅器は,位相感応光増幅器としてその存在が知られている。本研究は,光ファイバ型2ポンプ縮退パラメトリック光増幅を用いた位相感応光増幅器の原理検証を行うことを目的とする。 まず,提案する光ファイバ型2ポンプ縮退パラメトリック光増幅器の動作解析を行った。光ファイバには,石英ガラス分散シフト高非線形ファイバ(HNL-DSF)を仮定している。設計パラメータは,ファイバ長,信号周波数での分散値D,分散スロープ,ポンプ光1,2の間の周波数間隔,ポンプ光パワーである。数値解析により,パラメトリック利得を最大化する条件を探索した。この結果,信号光周波数での分散を抑え,逆に分散スロープ値を大きくし,さらにポンプ光周波数間隔を広げることにより,パラメトリック利得を増大させることが可能との知見を得た。 この設計に基づき,パラメトリック増幅用光回路を試作した。信号光の一部を抜き出し,狭帯域光バンドパスフィルタ(OBPF)で搬送波成分のみを切り出す。搬送波に位相変調(PM)を加え,変調サイドバンドを発生させる。EDFAで十分増幅した後,ファブリ・ペロー干渉計で2モードを切り出し,ポンプ光1,ポンプ光2とする。ポンプ光1とポンプ光2は位相変調サイドバンドであるので,位相同期が保たれる。信号光の遅延を可変にすることにより,ポンプ光と信号光の間の位相調整を行う。信号光とポンプ光は合波された後,縮退パラメトリック増幅器に導かれる。 変調周波数の制限により,十分なパラメトリック利得を得ることには成功していないが,今後光コム発生器を用いてポンプ光周波数間隔を拡大することにより,パラメトリック利得特性の改善を試みる。
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