Research Abstract |
鉱物資源の探査において最も基本となる情報である表層地質と断層の分布を,光学センサ衛星画像のマルチスペクトル解析,および高分解能の数値地形モデルに基づく斜面傾斜量の空間微分解析から推定できる手法を開発し,従来の手法よりも推定精度が高いことを確かめた。断層や不整合により地層の連続性が途切れる,古い地層の中に新しい火山岩が貫入しているなど,地質的な不連続性が大きいフィールドにも有効である地質構造モデリング法も見出せた。また,露頭調査やボーリング調査から得られ,鉱物資源の分布形態,賦存量の推定に不可欠となる種々の地質情報をデータベース化し,GRASS GISを基本ソフトウエアとして用いて,表層地質・断層分布・地質構造モデル・地質情報を有機的に統合できるシステムを開発した。これらの手法の有効性を検証するためのケーススタディとして,エジプト・シナイ半島でのカオリン鉱床に注目した。良質のカオリンは世界的に重要となっている粘土鉱物資源である。現地調査により23地点で種々の化学成分データを収集し,これと地形・表層地質・断層分布とを組み合わせたところ,カオリン鉱床の品質評価ではAl_2O_3/SiO_2,TiO_2/Fe_2O_3という化学成分濃度の比,およびカオリン層の層厚が重要な因子であることがわかった。これらのデータからバリオグラム解析を行い,空間的相関構造や異方性,多変量間の関連性を定量化し,クリキングによって空間分布をモデリングした。その結果,高品質部の3次元分布が明らかにでき,鉱量の適切な評価も可能になった。空間分布モデルからカオリン堆積時の古環境も推定できた。このように本研究の成果は,鉱物資源の探査・開発において,利用価値の高い良質のゾーンや分布形態を精度良く把握することに貢献できる。
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