2007 Fiscal Year Annual Research Report
ナメクジウオを用いた内分泌かく乱化学物質の作用に関する研究
Project/Area Number |
07F07143
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
窪川 かおる The University of Tokyo, 海洋研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ROY Sonari 東京大学, 海洋研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 進化 / 性ステロイド / DHT / ナメクジウオ / 環境ホルモン |
Research Abstract |
本研究は、内分泌かく乱化学物質の作用機構を、脊椎動物の直近の祖先であるナメクジウオを用いて調べることを目的とする。エストロゲンなどの性ステロイドは脊椎動物の生殖に必須のステロイドであるが、内分泌かく乱化学物質のひとつであり、微量で生体に影響を及ぼす。無脊椎動物はアンドロゲンやエストロゲンといった性ステロイドをもたないが、ナメクジウオは無脊椎動物の中で唯一これらの性ステロイドおよびその合成系が存在することを、最近代表者のグループで明らかにした。本研究では、次の3つの実験を行なった。1)性ステロイド合成系の詳細を検証するために、HPLC卵巣の性ステロイドの分離同定を試みたところ、新たに5αデハイドロテストステロン(DHT)が含まれていることがわかった。5α-DHT量はすでに同定していた他の性ステロイドよりも多く、主たる性ステロイドの可能性が高い。2)生殖腺が未発達な非繁殖期と生殖腺が発達中の繁殖期前の雌雄のナメクジウオを性ステロイド入りの海水で飼育し、生体への影響を調べた。非繁殖期の個体では、エストロゲンに卵成熟の促進が見られ、作用は濃度依存的であった。発達中の生殖腺では、17α-ヒドロキシプロゲステロンが発達を阻害することがわかった。他の性ステロイドの生殖腺発達への影響は、組織学的には見られなかった。3)免疫組織化学の結果、CYP19は生殖腺には検出できなかったが、神経索腹側の神経細胞に陽性反応が見られた。エストロゲン受容体は生殖腺にも神経索にも検出できず、鰓細胞に存在が確認された。ここで用いた試料は2)の個体からのものであったが、今のところCYP19とエストロゲン受容体は、生殖との関連が不明である。今後は、さらに性ステロイドの分離同定を進め、5α性ステロイドの同定とその作用を明らかにし、最終成熟や産卵行動の誘発を引き起こす性ステロイドを決定したいと考えている。
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Research Products
(1 results)