2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07144
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神崎 亮平 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HAUPT Stephan S. 東京大学, 先端科学技術研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 神経行動学 / 定位行動 / tract-tracing / 免疫組織化学 / 電気生理学 / 化学感覚 |
Research Abstract |
初年度に当たる2007年10月から2008年3月までは、研究実施計画に基づき、主に研究に必要な要素技術の確立を行った。 まず行動実験では、カイコガの歩行運動を計測するために、胸部を拘束したカイコガを空気で浮上させたボールの上で歩行させ、ボールの回転を歩行運動として高い時間分解能で計測する実験装置を構築した。この実験装置は、フェロモン刺激によるカイコガの歩行運動や、その他の行動の時間的な変化を詳細に分析するのに必要である。また、予備的な実験として、カイコガを解剖することなく触角電位を計測する手法を試みた。これは中枢神経系がフェロモン刺激を受容する様子を感覚フィードバックのある条件で捉えるための試みである。この手法はまだ完全には成功していないが、低侵襲で計測できる利点は大きく、行動中の計測も期待できる。 神経解剖学分野では、免疫標識を施した特定の神経細胞を同定する手法を試みており、こちらは実用的な段階に近づきつつある。我々の研究室では、フェロモン情報を処理する神経経路の解析を進めており、完全な解明を目前にしている。現在行っている免疫組織化学的手法と、単一細胞染色、複数細胞染色を組み合わせた手法により、この神経経路の完全な理解が期待できる。 理論的な研究分野では、カイコガの歩行運動を指令する神経群の「フリップ・フロップ応答」に注目して、結合振動子を用いたシミュレーションを実施し、その適合性を評価した。さらに、モデルの直接的な検証手法の一つとして、ボルテージクランプによるカイコガの中枢神経系の神経応答計測技術をほぼ確立した。この手法によって得られる「フリップ・フロップ応答」を示す神経情報は、その形成機構を理解するための唯一の直接的な情報になりうるものである。この神経機構の解明は本研究計画の主要な課題であるがゆえに、この研究手法の確立は次年度以降の研究遂行にとって極めて重要な意味を持つ。
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