2007 Fiscal Year Annual Research Report
抑制シナプスの長期増強による視覚野加塑性の感受性期制御
Project/Area Number |
07F07185
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小松 由起夫 Nagoya University, 環境医学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
REZA Mohammed Faruque 名古屋大学, 環境医学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 感受性期 / 視覚野 / 経験依存的発達 / 抑制性シナプス / 長期増強 / GAD65欠損マウス |
Research Abstract |
抑制性シナプス伝達による感受性期の制御機構を調べる目的で、視覚野2/3層錐体細胞の抑制性シナプス後電流(IPSC)とその長期増強を、正常マウスと感受性期の開始が遅延する暗室飼育マウス及び感受性期が開始しないGAD65ノックアウトマウス(GAD65-K0)で比較した。感受性期開始前期(生後16-20日)と感受性期(生後25-3日)において、正常マウスに比べて暗室飼育とGAD65-KOマウスでは、微小IPSCと単一IPSCの振幅、長期増強の大きさは共に有意に小さく、paired-pulse ratio(PPR)は逆に有意に大きかった。3つの実験動物群においてそれぞれ感受性期開始前期から感受性期にかけて、微小IPSCと単一IPSCの振幅、長期増強の大きざは有意に増大し、PPRは逆に有意に減少した。しかし、暗室飼育とGAD65-KOの感受性期におけるそれらのパラメータの値は共に、正常マウスの感受性期開始前期の値とほとんど同じ大きさのレベルにしか到達しなかった。この結果は、抑制性伝達とその長期増強が一定のレベルに達することが感受性期の開始に必要であることを示唆している。また、発達に伴う抑制性シナプス伝達の増強には視覚入力に依存するものと依存しないものが存在することも示している。長期増強の誘発には錐体細胞から放出されるBDNFが必要であるが、視覚人力がないと錐体細胞でのBDNF発現レベルが低いので、長期増強が起こりにくい状態になっており、そのため抑制性シナプス伝達の発達が遅滞すると思われる。長期増強の大きさは、感受性期開始前期に比して感受性期でははるかに大きいので、長期増強は感受性期の制御だけでなく、視覚反応の経験依存的成熟自体にも寄与する可能性が強い。
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