Research Abstract |
本年度は,現地調査,文献調査,衛星画像解析,GISに基づく空間分析などを実施して,以下の研究成果を得た.(1)観光の発展により,マサイ・マラ観光のゲートウェーであるナイロビでは外国人観光客が増加し,これは経済成長を促し,首都の経済発展をもたらしている.以上を踏まえて,ナイロビの都市成長のプロセスとメカニズムを現地調査と統計処理により解明し,その成果を国際誌「Urban Geography」に投稿し,受理された.(2)ナイロビにおける土地利用の空間的拡大過程をセルオートマトンの技法を援用して定量的に解析し,将来の土地利用変化を推定した.空間モデル分析により市街地の増加と農村的土地利用の急激な減少が明らかになったが,その成果は東京大学CSISのシンポジウムで発表した.(3)2008年12月に実施したフィールドワークを元に,マサイ・マラ地域の環境悪化の実態とそのメカニズムを分析した.衛星画像により,林地が農地に代わり,集落が増加していく過程を把握するとともに,マサイ族の生業が環境の変動にどのような負荷を与えるかを,12月に行ったインタビュー・聞き取り調査の結果と重ね合わせて分析した.また,観光客の増加に伴う経済活動(サファリーツアー,ホテルの立地,商業施設の立地)の影響を考察して,空間的インパクトを推定した.マサイ・マラ国立公園内は,国のプロテクト政策により,環境が保全されているが,その規制の対象になっていない周辺地域で環境悪化が進んでいることが明確になった.規制外のまさにこの地域に欧米の観光業者が進出し,乱開発が認められた.周辺地域では,生態系の維持に関しては十分な配慮しているとはいえない.この研究成果は2009年5月に幕張で開催される地球惑星科学連合の大会で発表する予定である.
|