2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07312
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
多和田 眞 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SUN Shuqin (孫 淑琴) 名古屋大学, 大学院・経済学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | illegal migration / minimum wage / economic effect / international migration / pollution |
Research Abstract |
本年度主に環境問題と労働移動の研究を行った。グローバル化の進展と共に環境問題が近年深刻化している。特に発展途上国は先進国へのキャッチアップのため、資源浪費型、環境破壊型の急速な工業化を進めており、国際貿易や要素移動のモデルに環境面を導入して分析することは極めて重要である。この課題の第一歩では、ハリス=トダロ・モデル(工業化の推進による経済発展と都市化の関連でよく知られているモデル)を用いて途上国の環境問題と労働移動や経済厚生に焦点をあわて、環境汚染削減技術の改善が経済に与える効果を分析した。分析により興味深い結論が導出されている。一つの結論は汚染削減技術の改善が都市失業の増加を招くが、労働者全体の厚生に影響を与えないこと、資本者全体の厚生を増加させ、国の経済厚生を上昇させることである。もう一つの結論はハリス=トダロ・モデルについての先行研究の中で「労働要素賦存量の増加は都市の失業を減少させ、資本要素賦存量の増加は都市の失業を増加させる」というパラドックスは本研究で消える可能性があるというものである。この課題の第二の拡張として、不法移民と環境問題についてのモデルを構築した。不法移民に関する先行研究は多くあるが、環境問題を不法移民のモデルに導入する研究はそれほど多くはない。先ほど述べたように、途上国は環境を犠牲して急速な工業化を求める姿勢がよく見られる。このような現象がもたらす環境悪化が人を海外流出させることになるであろう。したがって、先進国の高収入だけでなくよりいい環境も途上国の人を引くことになっている。Bond-Chenの枠組みに最低賃金制を導入し、環境問題も考慮に入れてモデルを構築して不法移民の経済的効果を分析した。分析により、次の結論を得た。第一:環境政策の強化は受入国の経済厚生を上昇させるが、汚染削減への補助金の増加は不法移民の増加を招く。それに対して、排出税の増加は不法移民管制の目標に達成させる可能性がある。第二:不法移民の引締め政策の強化は不法移民と汚染の排出を減少させるが、経済厚生への影響が不明である。 作成した論文を学会で報告し、他の研究機関に属する研究者とも交流した。いろんな研究者と意見交換した上で論文を直し終わり、雑誌に投稿中である。
|