2009 Fiscal Year Annual Research Report
情報と流通システム-空間的競争モデルを用いたインターネット小売市場に関する分析
Project/Area Number |
07F07313
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
王 海燕 Kyoto University, 経営管理研究部, 研究員
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Keywords | 生産者の販売チャネル管理 / ネット業者の配達費用 / 消費者の移動費用 |
Research Abstract |
今年度は複数の生産者が存在する場合、ネットチャネルの導入条件およびその導入による厚生上への効果について検討した。消費者の移動費用が高くかつネットチャネルの配達費用が低い場合には、一方の生産者のみがネットチャネルを導入し、また、移動費用がある程度低ければ、いずれの生産者もネットチャネルを導入しなくなるというものである。このことは「店舗システムの効率が悪く、ネットチャネルの効率が良いときに、それが導入される」という当然の主張であるが、ネット市場での厳しい競争を避けるために、片方の生産者のみがネットチャネルを導入するので、均衡では非対称なケースが得られるのである。 また、ネットチャネルの導入は、移動費用および配達費用がともに低い場合にのみ、消費者余剰を向上させる。というのは、ネット価格が留保価格以下に設定されるため、ネットから購入する消費者は正の余剰を得る。配達費用が低ければ、ネット販売量がより多くなり、導入後店舗価格の上昇による消費者余剰が多少減少しても、全体としての消費者余剰が増加する可能性はあるからである。また、生産者がネットチャネルを導入するということは、彼の利潤も増えることを意味するから、このときには生産者の利害と消費者の利害が一致することになる。 ネットチャネルの導入が経済厚生に及ぼすルートは2つある。1つは販売量の増加であり、もう1つのルーとは、導入によって店舗業者の商圏の変化に基づくものである。小売段階でキンク均衡が成立していた状況では、導入によって販売量の増加効果はないが、しかし仮に配達費用が十分低ければ、導入後のネット価格が低いため、ネット販売量の拡大により、両店舗の商圏は縮小する。店舗までに遠くにいる消費者がネットチャネルから購入することによって高い移動費用が節約され、無駄が生じないため、総余剰が増加する。
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Research Products
(2 results)