2008 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンナノデバイスにおける相対論的電子の量子輸送
Project/Area Number |
07F07372
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樽茶 清悟 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CRACIUN Monica Felicia 東京大学, 大学院・工学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | グラフェン / 2層グラフェン / 3層グラフェン / ティラク粒子 / 電気伝導実験 / バンド構造制御 |
Research Abstract |
本研究では、新しい材料であるグラフェンにおいてその挙動がディラック方程式に従う相対論的電子による量子輸送現象の新しい側面とその物理を実験的に明らかにすることを目的としている。本年度の研究ではグラフェンの層数が1から増えていってグラファイトに至までの間に電気的性質がどのように変化していくのかを調査。1層、2層、3層および4層のグラフェンの電気伝導特性を調べ、比較した。その結果、夫々のグラフェン材料がユニークで異なる電気的性質を持つことがわかった。その違いは特に外部電場への応答として現れ1層では外部電場にほとんど依存しないバンド構造を持つのに対し2、4層では電場によってバンドギャップが誘起されることが確認できた。3層のグラフェンについてはこれまで実験例がなかったことから電気的な性質をより詳細に調べた。キャリア密度と温度の関数として電気伝導を測定することにより、3層グラフェンが半金属であることと伝導帯と価電子帯の重なりが垂直電場に比例して増大することがわかった。このように、バンド構造が垂直電場に強く依存するのが多層グラフェンの特徴であり、伝統的には電子デバイスのキャリア密度や移動度の制御だけに使用されてきたゲート電圧をバンド構造そのものを制御するために利用するきっかけになると期待できる。更に将来のデバイス応用を見据え、グラフェン-金属電極間の接触抵抗が及ぼす影響に着目し、Ti/Auとグラフェンとの接触抵抗を異なる厚さ(1層から3層)のグラフェンについて調べ、11ものグラフェンのかけら上に作成したデバイスで比較することにより接触抵抗が1層、2層、3層の全てのグラフェンにおいてほとんど同じ(~800・・m)でありゲート電圧や温度に依存しないことがわかった。これは、金属からグラフェンへのキャリア注入によって金属と接合するグラフェンのフェルミ面が電荷中立点(charge neutrality point)から遠く離れてしまうためであると考えられる。
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Research Products
(5 results)