2008 Fiscal Year Annual Research Report
扁桃体における痛覚関連情動の形成メカニズムと情動の神経因性疼痛に対する影響
Project/Area Number |
07F07419
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
重本 隆一 National Institute for Physiological Sciences, 大脳皮質機能研究系, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DONG Y.-L. 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 外国人特別研究員
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Keywords | 神経因性疼痛 / グルタミン酸受容体 / シナプス / 扁桃核 / 情動 / 傍小脳脚核 / 記憶 |
Research Abstract |
扁桃体は、脳の中でも情動の発現に重要で恐怖や不安といった感情に最も直接的に作用する感覚は、痛覚である。このような情動は、神経因性疼痛を増強するものだが、痛覚がどのように扁桃体で情動記憶として蓄えられ、それがどのように神経因性疼痛に影響をおよぼしているのかについては、不明である。現在、神経因性疼痛を末梢神経の障害によって引き起こすことによって、中心核神経細胞のAMPA受容体を介するシナプス反応の増大が起こることが知られている。そこで、本研究では扁桃体中心核のどこでAMPA受容体あるいはシナプスが変化しているのかを解明する。 L5神経の結擦を行うことによって、神経因性疼痛と痛覚関連情動を引き起こした。これによる扁桃体中心核での形態学的シナプス変化を電子顕微鏡で検索したところ、傍小脳脚核から直接投射するシナプスでは手術後7日でシナプス面積の有意な増大が見られた。またこのシナプスはほとんどの場合、樹状突起部にシナプスを形成し、棘突起上のシナプスは10%程度しかなかった。そこで中心核の樹状突起上のシナプスのAMPA受容体密度を調べたところ、これも有意に増加していた。次に視床や大脳皮質を介して投射する基底外側核からのシナプスを調べたところ、80%以上が棘突起上にシナプスを作っていることがわかった。この種のシナプスについては現在、大きさやAMPA受容体密度について検索を進めているところである。以上のような形態学的変化が神経因性疼痛や痛覚関連情動とどのように相関しているかを調べるために、alodyniaの検索を行ったところ、手術後7日目には強いalodyniaが認められた。痛覚関連情動に関しては、圧刺激に対する超音波発声や針先刺激床に対する嫌悪応答の変化などを現在検索中である。来年度の研究期間終了時までにはこれらのデータをまとめ、論文として投稿する予定である。
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