2009 Fiscal Year Annual Research Report
動物はどうやって「判断」するのか:線虫行動から分子機構を解明する
Project/Area Number |
07F07422
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
森 郁恵 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JURADO P.M. 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 線虫 / 意思決定 / 温度走性 / 学習 / 記憶 / 突然変異体 |
Research Abstract |
情動、認識、判断などの人間の活動は、従来、主に心理学者や認知科学者によって研究されてきたが、分子メカニズムに迫るには、別の研究アプローチが必要である。そこで、本研究では、神経細胞のネットワークが、全生物を通じて、ほぼ唯一、個々のニューロンの結合のレベルで明らかになっている線虫の温度に対する応答行動(温度走性)において観察される行動可塑性を指標として、動物が「意思決定をする」際に、一体、神経系はどのように活動しなければならないかに関して、分子レベルで探ることを目的とした。線虫が餌を充分に与えて飼育された後、餌の無い温度勾配上に移されると、まず、過去の飼育温度に移動するが、長時間そのまま餌のない状況におかれると、その飼育温度領域から分散していくという現象が観察される。この「飼育温度へ移動する」状態から「温度勾配上全体に分散する」状態へ移行する現象が、どのような分子機構によって規定されているかを解明することは、意思決定の分子機構の解明に通じると考えた。長時間餌のない温度勾配上に置かれても、「分散しない」複数の突然変異体系統について、どの遺伝子に異常が起きているかについて解析した結果、そのうちの1系統において、OBG superfamilyに属するGTPaseをコードする遺伝子に突然変異が起きていることがわかった。この遺伝子は、種を超えて高度に保存されており、他の生物種における研究から、翻訳制御に関与していることが報告されている。今後は、線虫の温度走性における意思決定において、翻訳制御がどのように関与しているかを解析する予定である。
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Research Products
(2 results)