2008 Fiscal Year Annual Research Report
作物の耐湿性強化に寄与するRadial O_2 Lossバリア形成の分子機構の解明
Project/Area Number |
07F07424
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中園 幹生 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MALIK Al Imran 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 耐湿性 / コムギ / Radial O_2 Lossバリア / レーザーマイクロダイセクション / 根 |
Research Abstract |
これまで、耐湿性・耐塩性極強のオオムギ属の雑草であるHordeum marinumに着目し、その耐湿性機構の解明を目指し研究を進めてきた。その結果、H.marinumはイネと同様に根の通気組織が良く発達していることを明らかにした。さらにRadial Oxygen Loss(ROL)バリアが形成されることを報告した。ROLバリアとは、根の基部からの酸素漏洩を防ぐバリアのことで、通気組織を通じた酸素輸送過程での酸素損失を最小限に抑えて根端まで効率的に酸素を供給する役割を担っている。これは、水生植物、半水生植物の特徴の一つである。それに対し、コムギの根では、通気組織の形成に時間がかかることとROLバリアが全く形成されないことを、我々は明らかにしており、両植物のこれらの性質の違いが耐湿性の強弱を決定することを示唆した。根の酸素通気システムの効率化に関わるROLバリアは植物の耐湿性にとって重要な形質の一つであるが、その分子機構は解明されていなかった。平成20年度、申請者は当初の予定通り、イネのROLバリア形成のタイミングを特定した。さらに、形成中の組織のみをLaser Microdissection(LM)法で回収し、マイクロアレイを行うことで、ROLバリア形成中に発現量が増加する67個の遺伝子と発現量が減少する70個の遺伝子を同定した。その中には、ROLバリアの構成成分であるスベリン合成への関与が考えられる遺伝子が含まれていた。実際に湿害が問題となっているコムギはROLバリアを形成できない。そこで、イネで行ったLM-マイクロアレイのアプローチをコムギに適用し、コムギにおけるイネで同定した遺伝子のホモログの発現挙動を調べる。イネとコムギの遺伝子発現の比較により、ROLバリアの形成に重要な役割を果たす遺伝子の同定を試みている。これまで、コムギにおけるLM法の条件設定を決定した。現在はコムギの発現解析に注力しており、その後は、H.marinumを加えた比較解析により、ROLバリアの機構解明を目指す。
|
Research Products
(3 results)