2007 Fiscal Year Annual Research Report
カイコにおける体色突然変異の原因遺伝子のクローニングと体色発現機構の解明
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07F07427
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋田 透 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
孟 艶 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | キヌレニン加水分解酵素 / メラニン化 / オモクローム / キサントマチン / 遺伝子の水平転移 / カイコの突然変異 / 連鎖解析 / red blood |
Research Abstract |
「赤血」は「赤々々」系統に見出された形質で、壮蚕期に全身が赤みを帯びる。正常蚕の幼虫体液は体外へ取り出すとメラノーシスを起こして褐色化するが、赤血変異体の場合は赤色を呈する。赤血の原因遺伝子は21-0.0に座位する単一劣性遺伝子rbとされているが、いまだクローニングされていない。既往研究で、赤血の原因は3-ヒドロキシキヌレニンから3-ヒドロキシアントラニル酸への代謝が不完全であるためと推定されている。我々は、この反応を触媒する酵素、すなわちキヌレニナーゼの活性低下が赤血を引き起こしているのではないかと予想した。マルピーギ管のESTを利用してカイコキヌレニナーゼ遺伝子(BmKyn)の完全長cDNAをクローニングした結果、BmKynは426アミノ酸からなるタンパク質をコードし、その配列は細菌のキヌレニナーゼに高い相同性を示すことが判明した。rbをホモに持つ生物研No.771系統のBmKynを正常系統p50Tの配列と比較したところ、赤血系統ではORF内に1塩基の置換が生じ、BmKYNの102番目のアミノ酸残基がThrからlleへ変異していた。続いて、No.771♀x(p50TxNQ.771)F1♂の交配を実施し、得られた188個体においてBmKynの遺伝子型を調べた結果、赤血形質との間にまったく組換えが起きていなかった。したがってrb=BmKynと考えられる。BmKynの主な発現組織であるマルピーギ管などを調べたところ、p50TとNo.771系統でBmKynのmRNA量に差異は認められなかった。一方、マルピーギ管の粗抽出物中におけるキヌレニナーゼ活性を測定したところ、正常蚕(p50T)に比べて(p50TxNo.771)F1は70%、No.771系統は5%の活性しか示さなかった。以上より、BmKYNの1アミノ酸の変異によるキヌレニナーゼ活性の低下が赤血をもたらすのであろう、と結論される。
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Research Products
(3 results)