2009 Fiscal Year Annual Research Report
網羅的蛋白分解解析による歯周病の全身合併症発症機構に関する研究
Project/Area Number |
07F07454
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
丸山 征郎 Kagoshima University, 大学院・医歯学総合研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TANCHAROEN Salunya 鹿児島大学, 大学院・医歯学総合研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 歯周病 / PG菌 / 慢性全身性炎症 / 1RANK-RANKL |
Research Abstract |
これまでの研究で、歯周病菌P.gingivalisのプロテアーゼ:Kgpを歯肉上皮細胞に働かせ、その分解蛋白に網羅的解析を加えて得たうちの一つの蛋白分解産物を【K6F】と命名した。K6Fに関して以下のような結果を得ていた。すなわち 1)K6Fは歯周病患者のポケット浸出液中に存在する 2)K6Fは歯周病患者の病巣に浸潤しているマクロファージに貪食されている。 3)K6Fは主に歯肉上皮細胞やマクロファージ系細胞株を刺激して、遊走、炎症性サイトカイン産生を誘導する。 4)歯周病患者血中には、K6Fに対する抗体(IgG,IgAタイプ)が存在する。 5)K6Fは歯周病患者のリンパ球を刺激して的Blast化を惹起する。 これに加えて今回はさらにラットでの再現研究を行い、以下のデータを得た。 (1)K6Fをラットの下顎歯肉に免疫すると、2週間で当該部位に細胞浸潤を認めた。この細胞は破骨細胞で、ピットアッセイで陽性であった。この細胞はRANIK-RANKL経路が活性化されており、歯槽骨を吸収していた(CT,X潜像)。 (2)K6Fはin vitroで単球のPAI-1の産生を促進した。 これらの結果により、我々は、当初立てた作業仮説【歯周病は、歯周病菌プロテアーゼが作用して病巣で生成された蛋白分解産物による"自己免疫"のプロセスが、歯周病の遷延化と全身化(動脈硬化・血栓など)に大きく関与している】をほぼ必要十分レベルで証明しえたと結論している。残された課題は、 この自己免疫のプロセスをブロックする方法、いわゆる治療法の開発であるが、それに関しても2つの物質を発見した。一つは生薬由来の脂肪酸、あとひとつは生体内脂質メディエーターであるが、 さらに今後、常軌動物実験で検証を進めてゆくつもりである。いずれにしろ、今回の一連の研究で、歯周病の全プロセス(原因とプロセス、すなわち慢性化と全身化、合併症の発症機構)が解明された、と考えている。歯周病研究の歴史のマイルストーン的研究を完成することが出来て幸運であった。
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