2007 Fiscal Year Annual Research Report
新規なレーザー分光計測法による凝縮相の基本化学反応の研究
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07F07610
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
田原 太平 The Institute of Physical and Chemical Research, 田原分子分光研究室, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ABDELSABOOR Omar F. Mohammed 独立行政法人理化学研究所, 田原分子分光研究室, 外国人特別研究員
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Keywords | 超高速分光 / 先端分光計測 / ダイナミクス / 溶媒和ダイナミクス / 電子移動 / フェムト秒 / 時間分解吸収スペク |
Research Abstract |
凝縮相の分子ダイナミクスの解明は分子科学の中心的問題の一つであり、そのためには超高速分光による分子素過程の観測と理解が本質的に重要である。これまでに簡単な分子に対する理解はかなり進んだが、次々に創成される機能性分子や超分子、生命活動を司る生体関連巨大分子、界面をはじめとする多様な局所場での分子ダイナミクスの理解のために、時間分解分光による分子の基礎ダイナミクス研究の重要性はますます高くなっている。本研究では、電子状態に対する分光と振動状態に対する分光を総合的に駆使し、電子移動に代表されるような基本化学過程の本質的理解と、フォトクロミック分子や光機能タンパクなどに代表される機能性分子の機能発現メカニズムの解明のため、それらの基礎的分子ダイナミクスを明らかにする。今年度はABDELSABOOR博士に、受け入れ研究室である理研・田原分子分光研究室で行っている先端的分光実験に慣れ、関連技術に習熟してもらうために、フェムト秒時間分解吸収分光測定および定常蛍光分光によって研究をスタートさせた。最初の試料としては、電子励起状態で分子内電荷移動することが知られているホルミルペリレン(Formylperylene)を取り上げ、定常吸収、定常蛍光、フェムト秒時間分解吸収分光を用いて、光励起後の分子内電荷移動に伴う超高速分子ダイナミクスを調べた。5つの溶媒中(ヘキサン、ジクロロメタン、アセトニトリル、エタノール、メタノール)でスペクトル測定をしたところ、極性溶媒中では、生成した電荷移動型励起状態が溶媒和ダイナミクスによって安定化する現象がみられた。特にアルコール中ではその効果が大きく、通常の溶媒和ダイナミクスに加えて、ホルミルペリレンの電子励起状態と溶媒間の水素結合の形成によるエネルギー安定化があることが示唆された。
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