2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本の漢文学、特に江戸時代の漢詩、漢文の創作と詩文理論、詩文批評。また、それらと中国の古典文学について比較研究を行う。
Project/Area Number |
07F07710
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
WU Hongchun Kokugakuin University, 文学部, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
HU Jianci 國學院大學, 文学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 斎藤拙堂 |
Research Abstract |
本年度の研究は主に江戸時代の漢学者斎藤拙堂を対象に行った。拙堂は生涯を津藩という一地方で過ごしたが、その影響は全国に及んだ漢文学の大家である。総じてその文学における貢献から、3つの功績が後人の研究に値する。1.『文章』拙堂の文章は当時非常に名声が高く、作品は主に「拙堂文集」6巻及び「月瀬紀勝」2巻に収録されている。中内惇はその文章を「洵為独歩」と評して、高い評価を与えた。拙堂の文章の芸術性を客観的かつ詳細に分析することは、拙堂の日本漢文学史における高い位置づけに対する正確な認識が必要なだけでなく、江戸時代全般の漢文学が到達した高い水準に対する認識も非常に重要である。2.『詩』拙堂の詩は、頼山陽の「公詩不如文」との批評の影響のせいか、その評価は彼の他の文章ほど高くない。ただ、頼山陽は拙堂の初期の詩作を見たのみであって、拙堂の生涯の詩作は現存するものだけでも尚1200首ある。つまり今日では頼山陽の批評だけで全体を評価することはできない。拙堂の詩は当時一部が印刷されたのみで、長期に亘りその全貌を知ることはできなかった。幸いにも近年、汲古書院より「鉄研斎詩存」が刊行され、拙堂の現存する全ての詩作が収録された。これにより充分な資料を以て客観的に研究が可能となった。初歩的な研究によれば、拙堂は傑出した漢文の大家であるばかりでなく、出色の漢詩人ということができる。清の兪〓の編した「東瀛詩選」は拙堂の詩23首を収録し、同時に、「拙堂詩才横溢」と絶賛している。3.『文学批評』拙堂には「拙堂文話」8巻、「拙堂続文話」8巻があり、資料が豊富で内容も充実してる。この「文話」の体裁についていえば、富士川英郎氏は江戸時代全体を通してその右に出るものはないと考えている。清の李元度の「天岳山館文鈔」によれば、日本国人の選になる「拙堂文話」が「中国に逆流出した」との記載があり、本書が清の同治、光緒年間にすでに中国に伝えられていたことがわかる。しかし、現在まで学界の「拙堂文話」に対する研究は相当乏しいと言わざるを得ない。以上の研究は初歩的段階にあり、論文の完成は次年度に待ちたい。
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