Research Abstract |
今年度も昨年度からの継続研究課題として,実構造物の応答モニタリングを実施し,GPSによる強風時の風応答記録を収録を行い,データの蓄積を行った。前半の6ヶ月間は特別研究員の考案した種々のデータ解析手法を吟味,検討し,その発展を図った。後半の6ヶ月は,受入研究者(東京工芸大学,田村幸雄)およびその研究グループの研究者,ニューサウスウエールズ大学の研究者らとの議論を経て,より精度の高いデータ解析手法へと改善,発展させた。特別研究員の専門分野はシグナルプロセッシングの分野であり,研究代表者の専門分野である建築風工学の内容について専門的な議論を重ねることにより,他分野との融合を図ることができ,構造工学的見地,風工学的見地から考えた,最も適切な応答データ解析手法の検討を行うことができた。また,GPSだけでなく,同一の建物に設置された異なるセンサー(例えば,加速度計,速度計,もしくは新たに同期計測を開始した高精密傾斜計など)による観測データの合成による計測精度のさらなる高精度化について検討した。その際に,加速度または変位のいずれか,というように同種の量に変換することが必要となるため,データの効果的な合成を図るための変換モデルの開発を行うための調査を行った。先ず,加速度計の記録から変位データに変換した際に生ずるノイズの除去に関する新しい手法の検討を行った。この手法は,実験室レベルでの試験段階を経て,GPSと加速度計の相補的な特性を生かす手法である。例えば,加速度計の持つドリフト特性や重力が内在する振り子的な部分の静的成分や準静的成分に影響し,これらの計測結果に影響をもたらすが,GPS記録にはそれらの影響が現れないことが分かっている。そこで,GPSによる変位観測結果から,櫛形フィルタを用いて加速度を評価する試みが,特別研究員の手によって行われ,このデータ変換手法が適応型フィルタ技術を用いて改良された。
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