Research Abstract |
本研究は,地球化学反応データベースPHREEQCと土中の水分・溶質移動予測プログラムHYDRUSを組み合わせたHP1プログラムをさらに発展改良し,我が国固有の土壌,気象等の環境に対しての適用を試みることを目的としている。平成20年度は,溶質移動の基礎反応として,線形・非線型吸着反応,一次分解反応,一次分解連鎖反応,イオン交換反応,プロトンの吸着・解離反応などについてHP1による詳細な検討を行った。その上で,主に次の2点について,様々な条件における試算を行った。 (1)土中の窒素移動:成層土層の畑と水田を対象に,無機化,硝化,脱窒の各種反応を一次分解反応として表現し,さらに有機体窒素の土への吸着,アンモニア態窒素の陽イオン交換反応を考慮した式によるモデルを構築した。今後は,水田を対象にした酸化還元反応を取り込む予定である。 (2)アルカリ溶液の浸透:土中溶液のpHが変化すると,H+の土の反応基への吸着,また反応基からの解離により,変異正荷電量,負荷電量が変化する。これが土のpH緩衝能の原因である。緩衝能の高い火山灰土への石灰溶液の浸透を対象に,プロトンの吸着・解離反応を定義し,陽イオン交換,陰イオン交換を含むシミュレーションモデルを構築した。それにより,石灰溶液の浸透に伴い,pHの増加,陽イオン交換容量の増加,陰イオン交換容量の減少,Caイオンの吸着過程などの詳細が明らかになった。今後は,さらに酸溶液の移動も含めた様々な汚染物質の移動モデルへと拡張する予定である。
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