2008 Fiscal Year Annual Research Report
カラマツ林の食葉性昆虫の多様性とパフォーマンスを決定する生態学的プロセス
Project/Area Number |
07F07779
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
尾崎 研一 Forestry and Forest Products Research Institute, 北海道支所, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JOHNS Robert C. 森林総合研究所, 北海道支所, 外国人特別研究員
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Keywords | 食葉性昆虫 / 樹冠 / カラマツ |
Research Abstract |
食葉性昆虫の個体数は一本の木の樹冠内で大きくばらつくことが知られているが、この個体数の変異の実態と原因についてはほとんど研究されていない。本課題では、カラマツを食害する単食性と多食性の昆虫に注目し、「食葉性昆虫の樹冠内での分布は、葉の質と寄生率に対する適応的な反応によりもたらされる」という仮説を検証する。 今年度は、カラマツを食害する単食性の種としてカラマツハラアカハバチ、多食性の種としてマイマイガを対象とした。まず、2ヵ所のカラマツ壮齢林で、カラマツの葉の質の違いに対する幼虫の選択性を調べた。その結果、カラマツハラアカハバチは初期には新しい葉を、その後は古い葉を選択的に摂食した。一方、マイマイガは常に古い葉を選択的に摂食することが明らかとなった。次に、この2種の幼虫を実験室で飼育し、生存率や発育速度等のパフォーマンスを調べた。その結果、カラマツハラアカハバチは同じ齢の葉だけよりも、異なる葉齢の葉をいっしょに与えた場合に発育期間が20-25%短くなった。一方、マイマイガは、新しい葉よりも古い葉を与えた場合に発育期間が10%短くなった。以上の結果から、カラマツにおける葉齢に関係する葉の質の違いの影響は、カナダにおいて他の針葉樹で報告された結果と同程度であることが示された。また、観察された葉齢に対する選択性とパフォーマンスの関係から、これらの幼虫はカラマツの葉の昆虫の餌としての質の変異に対して適応的に行動していることが示唆された。
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Research Products
(2 results)