2007 Fiscal Year Annual Research Report
海洋底生動物の着底量のマルチスケール時空間変異性とその要因
Project/Area Number |
07F07781
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 隆史 Hokkaido University, 大学院・地球環境科学研究院, 准教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MUROE Daphne Marie 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | 海洋底生動物 / 加入 / 岩礁潮間帯 / フジツボ / 空間分布 / 集中分布 / 間おき / 幼生 |
Research Abstract |
海洋の底生動物の幼生の加入過程を理解するうえで、加入個体の空間分布特性(分布の集中性や均等性)を明らかにすることは重要である。そのために必要な個体の空間分布特性の解析方法(点パターンの解析手法)は近年急速に進歩した。そこで、こうした最新の解析方法を用い、岩礁潮間帯のイワフジツボを対象に50cm以下の空間スケールにおける加入個体の空間分布特性を明らかにした。 解析には北海道南部の垂直な岩礁に設置した永久方形枠(縦1m、横50cm)をから収集されたデータを用いた。方形枠内の岩表面は7月に無生物化し、その3ヶ月後に永久方形区内に設置した40コドラート(25cm^2)を写真撮影した。この写真を用い、定着個体の分布の集中性と均等性を、2cm以下の空間スケールではRiply's Kと近隣個体間密度関数を、20〜50cmスケールではGreen's係数、分散/平均値比、および正準化Morishita示数を、それぞれ用いて評価した。 その結果、2cm以下の空間スケールでは、微環境の空間異質性を反映していると思われる集中分布が認められたが、この影響を統計的に除去すると、加入個体は周囲ほぼ6mm以下の範囲では他個体と反発分布(間おき分布)を、6〜20mmの範囲ではランダム分布を示した。一方、20〜50cmスケールでは、水平垂直両方向で集中分布を示すことが明らかとなった。 これらの分布特性は、本種の生態的特性、つまり1)種内競争を避けて成体になるためには、最低5mmの間おきが必要なこと、2)交尾するためには数cmの範囲内に他個体が存在している必要があること、3)生存や成長が数〜数十cmスケールで変異する環境要因に依存すること、に良く対応している。このことは、観察された分布特性は幼生の適応的な定着場所選択の結果である可能性が示唆される。
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