2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07796
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 和夫 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG Jinyong 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 粘液胞子虫 / 微胞子虫 / ブリ |
Research Abstract |
近年、ブリ類養殖で問題となっている未同定の粘液胞子虫による脳脊髄炎(いわゆる「不明病」)と体側筋肉寄生微胞子虫Microsporidium seriolaeによるべこ病について、寄生虫の感染源や感染経路を特定するため、遺伝子解析技術を用いて疫学調査を行った。「不明病」原因粘液胞子虫は、そのSSU rDNAの分子系統学的解析結果からブリの胆管で発育するMyxobolus spirosulcatusであることが強く示唆されていたため、M. spirosulcatusのSSU rDNA塩基配列に基づいたPCR診断法を開発して、実際の養殖ブリを診断した。愛媛県、長崎県、大分県で養殖されていたブリを採集し、脳および脊髄の部位ごと(前方、中間、後方)に組織を摘出してPCR検査を行った。その結果、脳では陰性であったが、脊髄のとくに前方で陽性反応が頻繁にみられた。この結果は現場的な診断手順の確立に有用である。また、愛媛県内で6月に採捕して以降、陸上水槽内で飼育していたブリでも陽性反応が見られたことから、感染は6月以前のかなり早期に起こっていることが示された。全体的に、外観・剖検による発病の有無とPCRによる判定結果は必ずしも一致しなかった。これは不顕感染の状態がかなり多く起きていることを示唆するが、この粘液胞子虫寄生と「不明病」との因果関係を証明することが難しいことも意味する。べこ病については、タイのナマズ類に寄生するKabatana arthuriと、長崎県のべこ病発生海域に近い場所で得られたホシガレイの筋肉寄生微胞子虫Microsporidium sp.について、胞子を採集し、寄生虫の遺伝子解析を試みた。前者との比較は、M. seriolaeの系統学的位置付けの解明に役立ち、属名を確定するのに有用である。後者との比較は、べこ病の感染環を考える上で重要な情報になると考えられる。現在、いずれも解析作業の途中であり、まだ確定的な結論は導き出せていない。
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