2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07797
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
國廣 悌二 Kyoto University, 基礎物理学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZHANG Zhao 京都大学, 基礎物理学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | カイラル相転移 / 量子色力学 / カラー超伝導 / クォークの閉じ込め / ポリヤコフループ / 南部-ヨナラシニオ模型 |
Research Abstract |
u,dクォークのみの2フレーバーの場合について、閉じこめ相転移およびカイラル相転移だけでなくカラー超伝導相転移を現実的な状況で取り込み、量子色力学の有限温度・密度での相構造を明らかにすることを目的とした。閉じ込めのダイナミクスはポリヤコフループを力学変数として用いることで取り込み、カイラル相転移とカラー超伝導は南部-ヨナラシニオ模型で記述した。これまでこのような研究はWeiseグループのものがあるが、われわれは物理的に現実的な設定、すなわち、カラーおよび電荷中性の拘束をかけて相図の決定を行った。 この計算は6種類の異なる化学ポテンシャルを含み、カイラルとダイクォークニつの秩序変数についての変分計算であり、解析的にも数値計算上もかなり精緻な計算が必要とされる。昨年11月末からの開始にもかかわらず、今年度のうちに大体の結果が出せたのは喜ばしい。 その結果は以下の通り: 中性条件による拘束は大きく相図の構造に影響することが分かった。すなわち、カイラルダイナミクスとカラー超伝導の結合定数の比に依存して、低温領域の相転移が1次相転移からクロスオーバーに変化する。また、低温領域ではダイクォークとカイラル凝縮の共存することが新たに見出された。これはWeiseグループが見落としていたものである。これまでに、ベクター相互作用の効果やカイラルアノマリーの効果で、高密度かつ低温領域の相転移が1次からクロスオーバーになるとの研究と示唆はあったが、ポリヤコフループによる閉じ込めの効果を取り入れると、中性条件のために1次相転移がクロスオーバーに変化することはこの研究で初めて示された成果である。 今後、このような複雑な総転移の機構の物理的かつ直感的理解を目指して解析を行う予定である。
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