2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07807
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉澤 一成 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JUHASZ GERGELY M 九州大学, 先導物質化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 量子化学 / 遷移金属錯体 / 電子構造 / 密度汎関数法 / スピンクロスオーバー |
Research Abstract |
トリス(2-アミノメチルピリジン)鉄(II)イオン錯体[Fe(2-pic)_3]^<2+>の磁気的性質は、121Kを境にして変化する。この錯体は、121K以下の温度では主配置として低スピン状態(一重項状態)をとり、それ以上の温度では高スピン状態(五重項状態)をとる。Soraiらのメスバウアースペクトルの測定により、低スピンと高スピン状態間のエネルギー差は約2.5kcal/molと見積もられている。これまで、分子構造の歪みと各電子状態間のエネルギー差との関係は理論的に詳しく調べられていない。そこで本研究では、密度汎関数法を用いて、分子構造の歪みにより生じるエネルギー変化と安定なスピン状態との関係を明らかにした。一重項状態の安定構造を基準とした五重項状態の安定構造の相対エネルギーは、BLYP法では14.3kcal/mol、B3LYP法では-4.5kcal/mol、B3LYP*法では3.3kcal/molとなった。実験値2.5kcal/molに比べ、BLYP法による相対エネルギーは大きくずれ、またB3LYP法による相対エネルギーは実験とは逆に低く評価されているのに対し、B3LYP*法は実験値を良く再現している。B3LYP*法はB3LYP法に対してHartree-Fockの交換エネルギーの割合を5%減少させ、局所スピン密度近似の交換エネルギーの割合を5%増加さている。これにより、高スピン状態の安定性を過大評価するというB3LYP法の欠点が改善されている。さらに、分子構造を約0.8Å変位させれば、スピン状態が変化することが明らかとなった。これらの成果は近々公表予定である。
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