2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07F07809
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
倉本 義夫 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KISS Annamaria 東北大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 強相関電子系 / 多極子 / 磁性 / スクッテルダイト / CeB6 / SmRu4P12 / PrRu4P12 / 結晶場 |
Research Abstract |
本年度は,(1)スクッテルダイト,特にSmRu4P12での不思議な相転移とクロスオーバーの機構の研究,および,(2)多極子秩序全体を見渡して,問題点を整理することを行なった。以下にその成果を具体的に示す。 (1)SmRu4P12の相転移温度は磁場とともに上昇する。また,秩序相の中になまった転移線と見られる構造(クロスオーバー)があり,従来では,立方晶より低い対称性による双極子と八極子の混合から説明されてきた。我々は新たに結晶場励起状態の寄与で電気16極子が生ずることを考え,クロスオーバー自体は立方対称性のもとでも生ずることを示した。低対称性が効くのは,八極子秩序にともなって双極子も誘起される点である。このモデルでは,転移温度の磁場による上昇,またクロスオーバーが磁場の増加につれて鋭くなることを説明する。さらに,強磁場では,まだ観測されていない1次転移の可能性を指摘した。我々の新しいモデルはSmRu4P12の不思議な挙動を解明する基礎になる。 (2)多極子全般に関するレビュー論文を完成した。夏までにJ.Phys.Soc.Jpnの招待論文として出版される予定である。執筆のプロセスで,今まで混乱をもたらしてきた問題について批判的に再検討し,今後の発展に役立つようにした。例えば,点群では四極子と言っても16極子が混合しているし,八極子と32極子についても同様である。これらについて,実験的な検証も含めて,基本的な概念を明らかにした。
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