2008 Fiscal Year Annual Research Report
薬物トランスポーターにおける遺伝子多型の機能解析から個の医療への応用
Project/Area Number |
07J00040
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
櫻井 亜季 Tokyo Institute of Technology, 大学院・生命理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | ABCB1 / Smart Amp法 / SNP / 薬物トランスポーター |
Research Abstract |
近年、患者の遺伝子型に応じて最適な治療法を選ぶ「個の医療」の実現に向けた取り組みが世界規模で進んでいる。薬物の体内動態に関与するABC(ATP-binding cassette)トランスポーターの一塩基多型(SNP)は薬の効果および副作用に影響を与えることが考えられるため、本研究では、ABCトランスポーターのSNPの機能解析を行うことを目的とした。これまでにABCトランスポーターABCB1(MDR1/P-糖タンパク質)のSNP機能解析を実施し、タンパク質の機能を変化させるSNPを見出したが、これらの変異型タンパク質を強制発現させた哺乳類細胞では抗癌剤に対する耐性は野生型と比べて有意に変化しなかった。また、小児被験者における免疫抑制剤シクロスポリン(ABCB1の基質)の血中濃度を調べたが、ABCB1のSNPによる影響はほとんど認められなかった(神戸大学医学部付属病院、現・京都大学大学院薬学研究科栄田敏之教授との共同研究)。これらは、SNPのアミノ酸置換による基質特異性の変化が原因であるため、他の薬物を用いてさらに試験を行う必要がある。また、耳垢型決定遺伝子であるヒトABCC11のSmart Amp法用の遺伝子型診断プライマーを設計し、臨床検体を用いて試験したところ、反応開始から30分以内にシークエンス解析と完全に一致する結果が得られた。また、新たにABCB1の遺伝子多型を診断するプライマーの設計に着手し、ゲノムDNAまたは血液から30分以内に遺伝子型を正確に判別することに成功した(理化学研究所OSC林崎良英領域長らとの共同研究)。1つの塩基が3種類に変わるSNPの遺伝子型診断では診断ミスが起こりやすいため、今回の結果は個の医療の実現に大変重要であると考えられる。
|
Research Products
(6 results)