2007 Fiscal Year Annual Research Report
前近代南アジア農村社会における知:中世初期ベンガルを対象として
Project/Area Number |
07J00047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古井 龍介 The University of Tokyo, 東洋文化研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ベンガル / 中世初期 / 碑文 / 知 |
Research Abstract |
中世初期ベンガルにおける知の在り方の考察を目的とする本研究の今年度は、農村における碑文の在り方の再考を主に研究と調査を進めた。まず、9世紀北ベンガル農村に関わる3点2組の銅板文書(うち1点は未公表)の校訂・研究を行なうことにより、一次史料の拡充に努めた。これらのうち、パーラ朝の王ゴーパーラ二世の即位4年に属する二点の銅板文書は、貨幣単位による村落からの収穫の算出を示す現状で最古のものであること、また同日時・同所に別々の目的で発行されていることから、農村における土地査定システムの変化および文書の機能について示唆に富むものであった。 コルカタにおける二度のセミナーにおいては、碑文およびプラーナ文献のより深い読解を模索した。まず、アジア協会でのセミナー発表においては、銅板文書の宛先の変化を詳細に分析することにより農村社会における権力関係の変化を、また一部の例外的な文書の分析により土地関係の階層化を捉えた。カルカッタ大学のセミナー発表においては、ブリハッドダルマプラーナのヴァルナ混交に関する物語の分析を通して、在地ブラーフマナ層による社会階層の構造化および自己の知的権威維持の意図を読み取った。いずれも、農村社会における文献の在り方、特にそれと関わる社会階層の状況と意図を考察する端緒となるものであった。西ベンガルでのフィールドワークにおいては、ビルブム・ボルドマン両県の遺跡および巡礼地を訪れ、現地の碑文を撮影し、またそれらの地理的文脈を確認した。また、コルカタおよびシャンティニケタンでは現地研究者の協力を得、ビハールおよびバングラデシュで近年発見された碑文の画像を入手した。 今年度の研究は総じて試験的なものであり、それらによって得られた知見は、今後の研究により検証・実体化されるべきものである。
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Research Products
(5 results)