2008 Fiscal Year Annual Research Report
人工超格子形成による幾何学的磁気構造の設計と伝導特性の制御
Project/Area Number |
07J00077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小塚 裕介 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 酸化物薄膜 |
Research Abstract |
本研究の目的は酸化物薄膜超格子におけるバンド構造由来の異常ホール効果・スピンホール効果の原因を探り制御することである。近年、マンガン酸化物やパイロクロア酸化物において異常ホール効果とスピンの幾何学的配置の関連に興味がもたれている。さらに、非磁性物質においても特異なバンド構造により、スピン電流が生じるスピンホール効果は非常に注目されている。 このような背景に基づき、本年度は、チタン酸ストロンチウムを用いて超格子を作製する前段階として、パルスレーザー堆積法により高品質のチタン酸ストロンチウム薄膜を作製することを目的とした。チタン酸ストロンチウムは高品質薄膜が得られないため、現在では薄膜用基板以外の用途にはあまり用いられていない。 チタン酸ストロンチウムは化合物半導体より融点が高く、品質を高めるには通常の成膜より基板温度を高くする必要があると考えられる。また、欠陥方程式から酸素欠陥とストロンチウム欠陥の密度の積は一定となることが知られている。ストロンチウム欠陥量を減らすためには酸素欠陥を導入することが望ましので、低酸素圧成膜を実行した。薄膜作製後は酸素欠陥を埋めるため低温酸化雰囲気中にてアニーリングを行った。膜質評価は、低キャリア濃度ドープしたチタン酸ストロンチウム薄膜においての低温移動度で評価した。結果として、0.1mol%のキャリアをドープしたターゲットを用いた場合、1040度以下の成膜温度で完全に絶縁化した。一方、1050度以上より急激に金属的電気伝導度が観測され、2Kにおいて1000cm^2/Vs以上の電子移動度を観測した。 本年度の研究により、研究の要となるチタン酸ストロンチウム薄膜の高品質化に成功した。今後は超格子などを作製し、その超格子周期やドープ量などがホール効果にどのように影響を与えるのかを研究することが課題である。
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Research Products
(2 results)