2008 Fiscal Year Annual Research Report
小脳シナプス回路発達・制御におけるプレセレベリン・ファミリーの生理機能の解明
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07J00100
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 会里子 Hokkaido University, 大学院・医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小脳 / プルキンエ細胞 / 平行線維 / シナプス / 遺伝子改変動物 |
Research Abstract |
プレセレベリン・ファミリーは現在までに4つのサブタイプ(Cbln1〜Cbln4)が同定されており、これらはC1q/TNFスーパーファミリーに属し、6量体で機能することが分かっている。脳内において、各脳領域の主要なニューロンには発現しておらず、むしろそれらに投射するニューロンに豊富に発現している傾向がある。特にCbln1とCbln3は小脳の顆粒細胞に非常に豊富に発現しているが、プルキンエ細胞には発現していない。Cbln1の遺伝子欠損マウスにおいて、このマウスは重度の運動失調を示し、また平行線維-プルキンエ細胞(PF-PC)シナプスの密度が激減、さらにはPSD様の構造を持ちつつも平行線維終末と接合していないプルキンエ細胞スパイン(free spine)が多数認められた。また、このマウスの硬膜下腔にCbln1を投与すると、free spineは急速かつ大幅に減少し、正常なPF-PCシナプスの形成が促されたが、この改善効果は一過性のものであり、約1ヶ月で元の状態に戻った。これらのことから、Cbln1はシナプス前ニューロンである顆粒細胞よりなんらかの形で放出され、シナプスの形成・制御に関与していると考えられている。しかしプレセレベリンの具体的な放出様式や、受容体やその他の関連分子などはほとんど分かっておらず、またCbln1以外の分子の機能や、その他の脳領域での局在などについても明らかにされていない点が多い。 昨年度には、これまで詳細が明らかになっていなかったCbln1、またこれとヘテロメリック複合体を形成することが知られているCbln3の小脳における局在解析を行ってきた。その結果、Cbln1およびCbln3は、通常の免疫組織化学的手法ではそれぞれ小脳分子層もしくは顆粒層に主に分布していたが、抗原露出法を用いた免疫組織化学的手法では、共にPF-PCシナプスのシナプス間隙に集積していた。この局在性はグルタミン酸受容体(GluR)δ2のそれと非常に似ており、さらにCbln1遺伝子欠損マウスの表現型はGluRδ2遺伝子欠損マウスのそれと酷似している。これらの所見から、Cbln1とGluRδ2が小脳PF-PCシナプスの形成・制御・可塑性において非常に近接して、直接もしくは間接的に相互作用して働いている可能性が、解剖学的手法により示唆された。
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Research Products
(4 results)